保土ヶ谷・戸塚を電車で通過

東海道五十三次の神奈川宿に続く宿場町は、同じ横浜市内にある「保土ヶ谷宿」。江戸を出てから最初の難所と言われる「権太坂(ごんたざか)」を目前に控えた場所にあった。

権太坂といえばお正月恒例のスポーツイベント「箱根駅伝」で有名だが、箱根駅伝のコースは東海道五十三次の浮世絵が描かれた当時のルートとは別物。当時は現在の箱根駅伝で走るコースよりも傾斜がハードで、行き倒れになる旅人も多かったという。

歌川広重『東海道五十三次』保土ヶ谷 新町橋。難所の権太坂に挑むため、その前にここで休憩する人が多かったそう

保土ヶ谷宿の次、日本橋を出発して十里(約40Km)のあたりにあるのが「戸塚宿」。昔の旅人が一日がかりで歩ける平均的な距離にあたり、泊まり客で繁盛したという。

歌川広重『東海道五十三次』戸塚 元甼別道(もとまちわかれみち)。橋のたもとの道標には「左かまくら道」の文字。旅籠「こめや」の軒先にいくつも下がるのは旅仲間の団体名

東海道、次に向かうは藤沢宿

今回は保土ヶ谷宿・戸塚宿はJR東海道線で通過して「藤沢宿」に降り立つことにする。藤沢駅では、有名なあの浮世絵がお出迎え。

歌川広重『東海道五十三次』藤沢 遊行寺(ゆぎょうじ) 手前の鳥居は江ノ島弁財天へと続く「江ノ島一ノ鳥居」。藤沢は主要街道の分岐点で、特に大山詣で・江ノ島詣での旅人で賑わったという

歌川広重の絵に描かれている「遊行寺」という地名は、保土ヶ谷の権太坂と同様、耳にしたことがある人も多いはず。そう、こちらも箱根駅伝の難所の一つとされる「遊行寺坂」(ゆぎょうじのさか)だ。

ゴールの大手町に向かう復路・第8区。レースもいよいよ終盤に差し掛かり、優勝争いとシード権争いもジワジワとヒートアップしてくるタイミング。
スタートの平塚地点では平坦だったコースが徐々に上りはじめ、ラスト5km地点で立ちはだかるのが、この区画で最大の難所・遊行寺坂なのである。

遊行寺へと続く「遊行寺坂」。ここを走って登るのは確かにキツそう。だけど、ゆっくり徒歩で登るぶんには行き倒れるほどではない

遊行寺、正式名称は「藤澤山無量光院清浄光寺」。時宗総本山、盆踊りのルーツ「踊念仏」で知られる一遍上人(写真右)がお寺の開祖。境内には樹齢500年とも700年ともいわれる大銀杏がある(写真左)

箱根駅伝ファンなら遊行寺坂を登って東門を目指すのもいいが、桜並木の「いろは坂」に続く黒門こと「惣門(そうもん)」の方がシブく、個人的にはおすすめ

こうして遊行寺の坂をぶらぶら散歩していると、坂のふもとに「ふじさわ宿交流館」なる施設を発見。

藤沢市は文化的活動も活発で、「ふじさわ宿交流館」では定期的に落語の寄席が行われたり、さまざまなイベントが開催されているそう。

歩き回って疲れた足をやすめるのにはちょうど良いスポットで、中には宿場町だった当時を感じることができる展示が充実。

方向音痴の私にはありがたい、当時の町並みを再現したジオラマ。ようやく立体的に藤沢宿を脳内にイメージすることができた

藤沢宿を3DCGで再現し、コントローラーを使って歩き回れるコーナーも。浮世絵で描かれていた橋を渡れるのはちょっとワクワクする

ちなみに、藤沢本町駅から遊行寺まで行くには徒歩で20分程度かかる。ゆっくり寺社仏閣めぐりや宿場町気分を体感したいという人には、藤沢本町駅から徒歩5分程度と近い「白旗神社」の方へ先にお参りに行くのもおすすめ。東海道沿いに鎮座、宿場町の変遷を見守ってきた歴史ある神社だ。

白旗神社の「白旗」とは源氏の旗のこと。才気や武功が却って兄・源頼朝の怒りを買い自害させられた弟・義経。その首が辿り着いたことから当地で義経公を神様として祀るようになったという

2019年11月、新しいシンボルとして白旗神社に登場したばかりの義経公と家来・弁慶の銅像を眺めつつ、昔の東海道や藤沢宿の姿はどんな風だったのか頭の中に思い描いてみた。

歩けばそこに、ひょっこりと文化財

ちなみに遊行寺とふじさわ宿交流館、白旗神社は、それぞれ歩いても15分程度あれば移動できる距離感。まさに宿場町を散歩する感覚で、その道中に、思わぬタイミングで本格的な史跡や文化財に出くわすことがあるのが藤沢宿のおもしろさ。

なにこの建物、なんだか凄みを感じる…なんて思いながらシャッターを切ると、それもそのはず、さりげなく国の登録有形文化財だったりする。

江戸時代から茶・紙問屋を営んだ旧家「桔梗屋」。かつては蔵の町だった藤沢に唯一現存する店蔵で、国登録有形文化財。蔵は明治44年(1901)年、母屋は明治末年ごろ建てられたものだという

ふと気になり写真を撮ったらやっぱり国登録有形文化財だった、旧「石曽根商店」。明治34年創業の履物店で大正14年(1925)年建築

同じ藤沢市内にある江ノ島や近隣の茅ヶ崎、鎌倉などのメジャーな観光地と違って、日常の生活風景の中から歴史や文化がひょっこりと姿を現すのが、藤沢宿を歩く面白さだ。
車やバスでブーンと目的地まで移動も良いけれど、たまにはこうして町の中を徒歩で巡ってみると、思いがけない発見がある。

また、2020年2月22日(土)から「藤沢ひなめぐり2020」が開催。藤沢宿エリアを中心に、市内に数ある歴史的な建造物とおひなさま飾りがコラボ。藤沢に春を告げるイベントだ。

家々に伝わる約50年以上前のおひなさまを歴史的な建造物に展示

蔵まえギャラリー」は、江の島道に面したアートスペース。昭和4年築のお米屋さんの母屋と内蔵を生かし、ひなまつり展示の拠点にもなっている

何もない時期、箱根駅伝のランナーたちが駆け抜けるコースをゆるゆると巡ってみるのもいいが、雅なおひなさまの登場で町が華やぐタイミングは絶好のお出かけのチャンス。足を運んでみて。

 

取材・画像協力/湘南藤沢文化ネットワーク

遊行寺 http://www.jishu.or.jp/

ふじさわ宿交流館 https://fujisawashuku-kouryukan.com/

白旗神社 https://hakken-japan.com/shrines/shirahatajinja/


文/やまだ ともこ(ハッケン!ジャパン編集部)