こんにちは。写真家 齋藤ジンです。
11月になり朝晩涼しい日も増え、すっかり秋らしくなってきました。季節の変わり目は物悲しく何処か寂しげ。そんな時期に旅をしたいもの。
今回は、数年前に撮影した「松江城」、そして島根といえばの「出雲大社」と周辺の見どころについてお届けしたいと思います。
今更ですが、ご紹介といっても私は写真家なので書いている内容は文献等で調べた情報を少しと感想程度。あとは写真で城郭の美しさ、力強さを表現したいと思っています。
はい。では始めましょう。こちらが国宝「松江城」です!
言わずもがな、現存天守12郭のうちの一つで、江戸幕府が開かれた後の慶長12年(1607年)から16年にかけて、堀尾吉晴公により築城された平山城です。地上4層地下1階の5階建て、江戸時代までに建てられて現存する天守の中では二番目に大きい天守です。
ほとんどの城で、天守は白か黒のどちらかに棲み分けられます。白漆喰(しっくい)の白天守か、下見板張(したみいたばり)の黒天守か、です。城好きの皆さんなら、それぞれ代表的なお城が思い浮かぶのではないでしょうか。
この松江城は、仕上がった外壁の上に柿渋か黒漆を塗った下見板を貼った、下見板張の黒天守です。
ちなみに、前回ご紹介した「松本城」も黒天守、黒漆なので黒光りしていました。
松江城の方は、ちょっと現在何を塗っているのかまで正確にはわかりませんが、その佇まいと美しさは、まさに山陰随一の名城です。
千鳥が羽を広げたような屋根の姿から、別名「千鳥城」と呼ばれるようになったと言われます。
屋根の上の鯱(しゃち)は木彫りの銅板張りで左右に雄雌が分かれており、高さは2メートルを超え、こちらも現存する木造のものとしては最大級です。鯱からつづくカーブの曲線美は、下から見上げてもわかりますね。
明治時代に廃城となり取り壊された後、平成13年になってから復元された櫓(やぐら)も、当時の佇まいを今に伝えます。
写真は「太鼓櫓」(たいこやぐら)、太鼓を打って登城の時刻を知らせたと言われています。
石垣は、加工した面を合わせ石同士の隙間を減らす「打込み接ぎ」(うちこみはぎ)」という作り方で、これは安土桃山時代から江戸時代にかけての慶長年間につくられた城に特徴的な技術です。
特に、二の丸下の石垣から垣間見える天守が、最高にカッコいい!
城の周りのお堀は、城下町の松江市内まで延びる堀川になっていて、ほぼ当時の姿のまま現存しています。
このお堀を遊覧船でめぐることもできます。次回訪れるときは、ゆっくりと堀川めぐりもしたいところですね。
さて、次は松江城から穴道湖を挟んで西へ50kmほど進みます。
そこにあるのは日本を代表する神社で、誰もが一生に一度は訪れたい場所。神話の故郷と呼ばれる出雲の象徴!
そう、「出雲大社」です。
このときに生まれて初めて訪れ、感動しました。
境内は凛とした空気感で、ここだけはやはり何かが違う!と感じざるをえません。これが日本の名だたる聖地なのですね。
こちらも言わずもがな、「縁結び」で有名ですが、男女の縁だけではなく「生きるもの全て共に豊かに栄えていくための結びつき」という意味なのだそうです。
神話によると、当時とても豊かであった出雲国を統治していた大国主大神(オオクニヌシオオカミ)が、「日本民族を遍く(あまねく)照らす」天照大御神(アマテラスオオミカミ)に国をお譲りになった、とあります。その代わりに天まで届くほどの立派な御殿を建ててもらった、というのが出雲大社の始まりで、これが「国譲り」の神話として今も語り継がれています。
古代の大社は、当時なんと!高さ50mくらいあったとされています。
出雲大社のそばにある島根県立古代出雲歴史博物館に行くと、平安時代の大社を再現したという模型が展示されています。巨大な柱の展示もありました。もう圧巻です!
そして、もうひとつ大きいことで有名なのは、神楽殿の大注連縄(しめなわ)。長さは約13m、重さ約5.2t。こちらもまた巨大…!
そのほか、ムスビの御神像・御慈愛の御神像(いわゆる「因幡の白兎」)・銅の鳥居や東西の十九社など、境内は見どころ満載です。
もうひとつ、これは明け方に撮った、一の鳥居である宇迦橋(うけばし)の大鳥居を二の鳥居付近より撮影した写真。風情ありますので、ご覧ください。
次は、出雲大社とセットで訪れたい場所、まずは「稲佐の浜」(いなさのはま)です。
国譲り神話の舞台となった場所で、大国主大神が天照大御神の使いとご対面、国譲りの協議をしたとされています。
そして、いまでも一年に一度、縁結び会議のために全国から集まってきた神々をこちらでお出迎えするという伝説をもつ、神聖な浜なのです。
神々しいです。
最後にもう一カ所、大社より西へ9kmほど行った日御碕(ひのみさき)突端に鎮座する「日御崎神社」。
こちらは、天照大御神と須佐之男命(スサノオノミコト)を主祭神として祀った神社です。
伊勢神宮が昼を守るのに対し、ここ日御崎神社は「日本の夜を守るように」との命を受けてつくられたことに由来するそうです。たしかに、地図を見ても隠岐海峡に突き出した西の端に位置しています。
周辺はこんもりした山に囲まれ、神社の姿が見えてくると感動! なんとも神秘的なロケーションでした。
松江から出雲は、まさに、神々の国。その言葉が本当に当てはまる旅だと思いました。
皆さんもお出かけの際は、ゆっくりと古代の神様と、お城がいまに伝える悠久の歴史に思いを馳せてみてください。
今回は、「松江城」と「出雲大社」、周辺の見どころについてお届けしました。また次回、別の城郭でお会いしましょう。
※今回の写真は観光でのスナップ写真で、一般撮影可能場所な場所の写真のみになります。あくまでも個人としての旅の記録によるもので営利目的の撮影ではありません。
【おすすめ記事】
写真家が見る日本の美しい城(4) 国宝・松本城と信州長野の城
写真家が見る日本の美しい城(2) 熊本城2020年夏と大阪の城