誰もがどこかで見たことくらいはあるはず、歌川(安藤)広重の有名な浮世絵「東海道五十三次」シリーズ。その宿場町は今どうなっているのか、沿線住民に教えてもらう新企画がスタート。
第1回は、東海道五十三次のスタート地点である日本橋から。花のお江戸の中心地、当時既にパリやロンドンよりも巨大な、世界屈指の大都市だったそう!そんな街でデザイン事務所flavourを開業する小林彩子さんに、ご当地・日本橋の歩き方を教えてもらった。
※記事は、2019年当時の取材で、その後、お店やメニューには変更になっているものもあります(編集部)
タダで歴史散歩が楽しめる街・日本橋
日本橋は、じつに懐の広い街。住む人も働く人も観光する人も、すべて受け入れてくれる、とても居心地のいいところ。古いものを大切にしながら新しいチャレンジを続ける街であり、美味しいものに事欠かないのも、私がこの街を好きな理由です。
まずは、地名のルーツになっている「日本橋」に行ってみましょう。もちろん実際にある橋の名前です。
徳川家康が江戸幕府の開府にともない、この地に橋を架けて東海道の起点に定めたのが1603年4月14日。
そして現在の姿、ルネサンス様式の二重アーチ道路橋になったのは、1911年だそう。
じっくり見てみると飽きないぐらい様々な飾りや像がたくさん。 橋の下の船着場からはクルーズも楽しめます(要予約・有料)。
1.橋の上、中央にある「日本国道路元標」は国道1号(旧・東海道)の起点。文字は当時の総理大臣・佐藤栄作によるもの。高速道路などで見る「東京まで〇〇㎞」とは、この道路元標までの距離のことです。
2. 日本国道路元標のルーツ、「東京市道路元標」のレプリカ。
3.柱の銘板にある「日本橋」、こちらの文字を書いたのは、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜公!
4.橋の両端を始め、東京市の紋章を持つ獅子の像。「橋(8×4)」で32頭あるそう。
5.東野圭吾の小説「麒麟の翼」に登場する麒麟(きりん)の像。「日本橋から飛び立つ」イメージで作られたそうです。
6.橋の途中にある燈柱には、松と榎(えのき)の模様。日本趣味と和洋折衷を感じる装飾が随所に施されています。
春は桜の名所、日本橋さくら通り
東京駅からすぐの、茅場町方面に向かって伸びる約1kmの道。
昼間はリーズナブルなランチ、夜は美味しいお酒が楽しめる商店街で、春には約170本の桜が、まるで花のトンネルのように咲き誇ります。夕方には、東京駅を背中に高島屋方面を眺めると、お店の明かりに照らされた桜がとても美しいです。
老舗名店のおやつ食べ歩き
日本橋界隈は、歩いているだけでも楽しいですが、名店の食べ歩きもおすすめ。
●たい焼きの柳屋(人形町)
創業100年以上の老舗で、四ツ谷の「わかば」、麻布十番の「浪花家総本店」とともに「東京三大たい焼き』と称される名店です。
●とうふの双葉(人形町) http://www.tofunofutaba.com
明治40年創業の老舗、濃厚な豆腐はもちろん、甘酒や、豆腐のから揚げやドーナツなどスイーツもおすすめ。
●人形焼の板倉屋(人形町) http://www.itakuraya.com
こちらも明治40年創業。機械で作る人形焼がほとんどの今、創業以来変わらぬ手焼きで作られる七福神のお顔が愛おしい。
日本橋のご馳走ランチは、ここで
お腹が空いた、 ちょっと奮発して美味しいものを、というときに。知っていると便利な日本橋の名店。
●玉ひで(人形町) http://www.tamahide.co.jp/
1760年創業の鳥料理屋さんで、「親子丼発祥の地」と言われています。水天宮や甘酒横丁と合わせて立ち寄るのがおすすめ。
●日本橋玉ゐ 本店(日本橋) http://anago-tamai.com
もともと寿司職人だったご主人が始めた、あなご専門店。柔らかい「煮上げ」と香ばしい「焼き上げ」が選べます。終戦直後に建てられた、日本家屋の風情も素敵。ランチは、小箱を頼んで、最後に焼骨茶漬け用出汁をオプションでつけると、最高に美味しいです。
●蛇の市本店(日本橋三越前)
1889年創業、文豪の志賀直哉が愛したお寿司屋さんとして有名。酢飯にお砂糖を使わず、昔ながらのお酢と塩だけで仕上げた、すっきりとした味です。おすすめは、ランチの限定ばらチラシ。
日本橋の神社にお参り
ビルの谷間こんなところにと思う場所でも、由緒ある神社がいまもちゃんとある。そこがまたいいところです。
●福徳神社 https://hakken-japan.com/shrines/fukutokujinja/
モダンなCOREDOのビルを両脇に鎮座する姿が、いかにも都会の神社らしい佇まい。
江戸時代には幕府公認「富くじ」の発行を許されていた神社だったことから、宝くじの当選祈願で人気があり、幸運鈴が社殿前に置かれています。
ちなみに、外れくじのお焚きあげも行っているそうですよ。
教えてくれた人(取材・写真協力)/小林彩子
flavour主宰/グラフィックデザイナー&アロマキュレーター
1975年生まれ。女子美術短期大学 情報科グラフィックデザイン専攻卒。音楽出版社、制作会社のデザイナー&アートディレクターを経て、2006年にデザイン事務所「flavour」として独立開業。事務所のある東京・日本橋を拠点に多方面で活動中。
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