ごきげんよう。
ライターの、かがたにのりこです。

夏の京都は祇園祭一色。
鉾町はもとより、百貨店や、商店街、駅、いたるところでコンチキチンとお囃子が流れ、街全体に華やぎが感じられます。

祇園祭というと、山鉾巡行やその前夜の宵山を思い浮かべる方が多いのですが、実は7月1日の「吉符入り」から31日の境内摂社「疫神社夏越祭」で幕を閉じるまで、連日様々な神事・行事が繰り広げられています。つまり、祇園祭とは1ヶ月間全てを指すのです。

今回は祇園祭にちなみ、三條若狭屋の「祇園ちご餅」をご紹介します。

京都・堀川三条に店を構える三条若狭屋の代表銘菓であり、この時期、無性に食べたくなる和菓子でもあります。
通年商品なのですが、やはり7月は特に注文数が跳ね上がるそう。

若狭屋というと、京都には二條、三條、七条と頭につくお店がありますが、いずれも若狭屋総本家の流れを組むお店(残念ながら若狭屋総本家は第二次世界大戦後廃業)。

三條若狭屋は明治26年創業。
堀川通から千本通まで続く三条会商店街の堀川側の入り口に、本店と工場を構えています。

京都駅から二条城方面へ向かう9号系統や50号系統のバスユーザーの中には、「祇園ちご餅の、三條若狭屋へはこちらでお降りください」という堀川三条の案内アナウンスで、店名と商品名がセットで刷り込まれている方も多いのでは。

その昔、祇園祭の御位貰いの儀(おくらいもらいのぎ:お稚児さんに十万石の大名と同じ格式を授ける儀式)の後に振舞われていた味噌だれの焼き餅が、「稚児餅」。
疫を除き、福を招くと洛中の評判になったのですが、いつしかその存在は忘れられてしまったそう。

大正初期、祇園祭のお稚児さんのお世話をしていた二代目主人が忘れられていた餅のことを知り、京菓子として創作したものが「祇園ちご餅」のはじまり。
御位貰いの儀、2019年は7月13日に行われました。

以前は竹皮で包んでいたことが伺える粽の形のパッケージには、赤・黄・白の短冊がついており、“疫を除き福を招く”の文字が。

1包に3本入りで、薄紙にくるまれた串付きのお餅が行儀よく並んでいます。
薄紙を剥がすと、涼やかな見た目の氷餅がまぶされた求肥。
やわらかい求肥がベタベタと包みにくっ付かないように、いろんな粉状のものをまぶして試行錯誤を重ねたそうです。
私は氷餅の独特の肌触りが好きで、いつも食べる前に唇にそっとあてて、そのシャラリとした感触を楽しんでいます。

なかには艶やかな白味噌。
京の老舗、本田味噌本店の白味噌を求肥に合うようお店で炊き上げています。
ちゃんと甘いのに、不思議と夏でもさっぱりといただける美味しさ。
パッケージ以外は、見た目も味も大正時代から変わっていないそうですよ。

店内では、祇園ちご餅2本と飲み物のセットをいただくことができます。
包装されていない素の状態の祇園ちご餅は、どことなくふわっとした印象。
ちょこんと添えられた純和三盆の打ち物もうっとりする口どけの良さです。
堀川通の車や人の流れを眺めながら、夏を乗り切るための疫除けカフェタイムはいかがでしょうか。

ちなみに三条会商店街の中には八坂神社の境外末社である又旅社があります。
祇園祭の還幸祭では例年、四条新京極の御旅社を出発した三基の神輿が、この又旅社にやってきます。こちらも祇園祭で非常に重要な場所ですので、併せて訪れてみてはいかがでしょうか。

祇園ちご餅は賞味期限が常温で7日程あるので、お土産お取り寄せにもおすすめですよ。

祇園ちご餅
1包3本入り540円(税込) ・通年販売、お取り寄せ可
※価格は2023年6月現在


三條若狭屋
京都市中京区三条通堀川西
TEL 075-841-1381
http://www.wakasaya.jp/


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