ごきげんよう。
ライターの、かがたにのりこです。

秋は食材の宝庫。
とりわけ、京都の和菓子屋の軒先で躍る「栗餅」と「栗赤飯」の文字は秋からの使者だといわねばなりません。
栗餅と栗赤飯には甘露煮の栗を使ったタイプと生栗を蒸したものを使ったタイプがあるのですが、皆さんはどちらがお好みですか?
私は断然蒸し栗派なのですが、身近な人に話を聞いてみると、そもそも甘くない蒸し栗タイプの栗餅を食べたことがないという人も多いようで、これはお伝えしなければ!と取材を決行した次第です。

栗のブランドとして有名なのはやはり「丹波栗」ですが、これは品種名ではなく、丹波地方で採れる大粒の栗を表す名称。一般的な丹波栗の品種は「銀寄(ぎんよせ)」と呼ばれるものが中心だそうです。栗シーズンの中盤に登場する女王的な風格があります。

実は、この秋『できたての栗餅を食べてみようツアー』を企画していたのですが、昨今の状況を鑑みて今年は見送ることに…。そんな楽しいツアーのお誘いをくださったのが、わら天神や平野神社の近くに店を構える京菓子の名店「笹屋守榮」さんでした。

丹波から3日に1度届く、渋皮が残る丹波栗。
職人さんがきれいに掃除し、その日使う分だけを、30分〜40分かけてホクホクに蒸しあげます。

蒸し器の蓋を取ると、濃厚な栗の蒸気が作業場を包み込みました。
「今の時期は毎朝、栗を蒸すんだけど、どんなに朝ごはんを食べていても、この蒸気を浴びた途端にお腹がなりますね」とご主人の三田村さん。
私も思わず「うわーー!いい匂いーーー!」って声が出てしまいました。
蒸気なのに栗そのものを浴びているような衝撃。

もし来年、ツアーが開催できたら、粗熱を取るためにしばらく扇風機にあてる時間は、風下で栗の風を浴びる「スーパー栗風タイム」として参加者の皆様にも楽しんでもらおうと思います。

蒸し器の底に敷いている布巾は、1ヶ月ほど前は真っ白だったもの。
栗の渋によって茶色く染まっていました。

蒸している段階で身が割れた栗は、赤飯にいれられるのですが、赤飯には割れていない栗もゴロゴロ入っていて、「栗赤飯」というよりは、「栗栗栗栗赤栗栗飯栗栗」という感じなのです。なんという贅沢。

栗餅に話を戻しまして。

餅生地は、求肥(ぎゅうひ)と石臼でついた餅を半量ずつ混ぜたものを一晩寝かせ、馴染ませてから再び蒸しているので、弾力が頼もしいのなんのって。

例えば、いちご大福の餅生地なら、ふわふわの雪平(せっぺい)だったり、やわやわの求肥だったり、ちょっとわらび餅っぽくても合うのですが、栗餅や豆餅に関しては「お餅!」って感じの歯ごたえや風味が強い方が、相性が良いなぁと個人的には思います。

あんこは甘さを極力控えた丹波大納言小豆のこしあん。
「この栗を使ってたら、自然と甘いあんこではなくなります」とご主人。

丹波大納言といえば、生まれながらにして主役、みたいなイメージがありますが、こちらのこしあんは実力はそのままに、すこぶる安定感と余裕のある名脇役の貫禄。

上品な和菓子には素材の“香り”が感じられるものですが、あえていうならば、こちらの「栗餅」は、秋という季節が持つ豊かで力強い“匂い”を楽しむ一品だと思います。

すっくとした立ち姿も美しく、しっかりとした弾力の餅生地を噛み締めた時の餅米の匂い。
続いて広がる鮮烈な栗の旨みと鼻へと抜ける匂い。
あくまでも丹波栗を引き立てながら、甘さではなく匂いで余韻を残す、こしあん。

その三位一体感がふとした瞬間に舌に蘇るので、「思い出し笑い」ならぬ「思い出し旨い」まで楽しんでもらえることと思います。

賞味期限は当日限り。それもできるだけ早いうちに。

お取り寄せ時代には向かない、融通のきかないおいしいものを紹介してすみません。
だからこそ、秋の京都に来たのなら、この口福を逃す手はないですよね。

栗餅 200円(税込)・11月下旬頃まで

 

京菓子司 笹屋守榮
京都市北区衣笠天神森町38
TEL 075-463-0338
https://sasayamorie.com/
 


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