神社って初詣のときくらいしか行かない、という人もいるかもしれない。そして、たまに行くと
「手を洗うのって、どうするんだっけ?」「お賽銭を入れてから手を叩くんだっけ?それとも、ただ拝むだけでいいのか?」
そんなときに知っておいて損はない、
神社での参拝作法についておさらいしてみよう。

コロナ禍になって以降、感染症対策で従来と変わった面もあるが、お参りの基本的な流れは一緒で前と変わっていない。

 

1 鳥居の前でおじぎ 

神社は神様のおうち、神様がいらっしゃる場所。俗世から鳥居をくぐって聖域へ入る。
一度立ち止まり、心を落ち着かせてから「お邪魔します!」という気持ちで一礼をしよう。

2 参道の脇を歩いて社殿へ

参道の真ん中は、神様のための通り道として空けておくもの。お参りには、左右どちらかの道の脇を歩くようにしよう。
手水舎の場所が予めわかっている場合は、道の真ん中を横切らずに済むように「手水舎(ちょうずや・てみずしゃ)がある側」を歩くのがおすすめ。

3 手水舎でお清め

日本では古来、人間は日々暮らしているだけで、知らず知らずに罪・穢れ(けがれ)を身にまとうと考えられてきた。
そのため、
神様に失礼にならないように、昔は川や海に入って全身を清める「禊(みそぎ)」を行ってから神社へお参りしていた。
この「禊」を簡略化したものが「手水」(てみず・ちょうず)。禊と同じように、身も心も清める気持ちで行う。

手水の作法は以下のとおり

  • 手水舎にも神様がいらっしゃる。柄杓(ひしゃく)を持つ前に、軽く頭を垂れながら拍手を1回打つ
  • 右手で柄杓を持ち、水をたっぷりと汲み、左手を洗う
  • 柄杓を左手に持ち替えて、右手を洗う
  • 再び柄杓を右手に持ち替え、左手の手のひらに水を溜め、口に含みすすいだ後、静かに水を吐き出す
  • 左手に水をかけて、柄杓を立てて持ち、残った水を柄の部分に伝わせて洗う
  • 柄杓を元の位置に戻す

文字で書くと難しそうだが、イラストをご参考に。ここまでを、柄杓(ひしゃく)一杯の水で続けて行うのが美しいとされている。

※2022年春現在、感染拡大防止のため手水舎を閉鎖したり柄杓を使わない手水に変わっている神社もあります

4 鈴を鳴らす

拝殿前まで行ったら、鈴がある場合には鈴を鳴らす。音によって、その場を清め、神様をお迎えするという意味がある。

※2022年春現在、感染拡大防止の観点から鈴を鳴らすことを取り止めている神社もあります

5 お賽銭をいれる 

お賽銭箱に、静かにお賽銭を入れる。

ちなみに、お賽銭に金額の決まりはなく「5円玉を含めると神様とご縁ができる」というのは語呂合わせや験(げん)担ぎ、じつは根拠がない。
軽いご挨拶のつもりの参拝か、それとも感謝を伝えたりお願いをしたりするためか。自分で考えて、その時々で
妥当と思う金額のお賽銭を奉納するのが良いだろう。

6 二拝 二拍手 一拝

「拝」(はい)というのは丁寧なお辞儀のこと。腰をしっかりと曲げて、深々と、ゆっくりお辞儀をするイメージで。

  • 二拝=2回丁寧なお辞儀をして
  • 二拍手=2回柏手(かしわで)を打ち
  • 一拝=1回丁寧なお辞儀
  • このあとに改めて手を合わせて「祈念」。日頃の感謝や自分の決意などを神様にお伝えするのは、ここで、

    祈念が終わった後、軽くお辞儀をしてから下がる(このときのお辞儀は「二拝二拍手一拝」には含まれない)。
    下がる時も、できれば神様にすぐにお尻を向けない方がいい。数歩後ずさりしてから向きを変えて、その場を離れる。

参拝を済ませたら、授与所でお札やお守り、御朱印をいただくのも良い。
ちなみに、お守りは「買う」ではなく「いただく」と言うのが正解これらは神様の力が宿った「授与品」(授け与えられるもの)という考え方から、神社仏閣ではそのようになっている。

間違った参拝の仕方では意味がないのか?

そうとも言い切れない。よく知っている神社の神職さんから、こういう話を聞いた事がある。

「お正月やお祭りの日など『きれいに鈴が鳴らせなかった』『つい参道の真ん中を歩いてしまった』ということだってありますよね。でも、そんなのは気にしなくていいです。大切なのは真心。一生懸命、心を込めてお参りをすることの方が大事」

「例えば、二拝二拍手一拝の作法がまだ広まっていない頃、額が地面についてしまう土下座の姿勢で祈りを捧げる方もいたそうです。これは一般的な参拝作法とは異なるかもしれませんが、でも神様への祈りや畏敬の念は本物の真心ですよね。作法が出来てないからダメってわけじゃないんです。参拝作法というのは、いわば先人たちが生み出した知恵。作法を知っていることで祈ることに集中でき、より心が込めやすくなるのではないかと思います」

つまり、常識を知らずに恥をかかないためというよりも、神社に「お参りをしやすくするため」に考えられた知恵。
必要以上に堅苦しくキュウクツなものと考えるのは、本末転倒だ。

苦しい時の神頼みとはいうけれど、神様ってなかなか願いを叶えてくれない、と思うことだって正直あるだろう。
でも、神社へ行ってお参りをすることで、自分の希望や決意を再確認したり、心を整える効果だって期待できるはず。
そんな風に考えて、
近くの神社へお参りに行ってみるのはどうだろう。

※ここで紹介した「作法」は一般的なもの。神社によっては違う場合があります
 


構成・イラスト/まつもとりえこ

原文/平井かおる (「日本の神道文化研究会」会員・ライター。著書に『暮らしのしきたりと日本の神様』(双葉社) ほか)

 


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