神社って初詣ぐらいしか行かないという人も多いのでは。「ところで手を洗うのってどうするんだっけ?お賽銭を入れてから手を叩くんだっけ?それとも拝むだけでいい?」そんなとき、知っておいて損はない、神社での参拝作法についておさらいしてみよう。
2020年以降、感染症対策で手水舎が閉鎖されたり柄杓を使わないところも増えているが、お参りの基本的な流れについては一緒だ。
1 鳥居の前でおじぎ
神社は神様がいらっしゃる聖域で、俗世から鳥居をくぐって聖域へ入る。鳥居の前で一度立ち止まり、心を落ち着かせて「お邪魔します」という気持ちで一礼を。
2 参道の脇を歩いて社殿へ
参道の真ん中は神様の通り道。なるべく左右どちらかの脇を歩くようにしよう。手水舎の場所が予めわかっていれば道の真ん中を横切らずに済むように「手水舎(ちょうずや・てみずしゃ)がある側を歩く」のがおすすめ。
3 手水舎でお清め
日本では古来、日々暮らしているだけで、知らず知らずに罪・穢れを身にまとうと考えられてきた。そのため昔は、神様に失礼にならないよう、川や海に入って全身を清める「禊(みそぎ)」を行ってから神社へお参りしていた。この「禊」を簡略化したものが「手水(ちょうず・てみず)」。身も心も清める気持ちで行う。
- 手水舎にも神様がいらっしゃるので、柄杓(ひしゃく)を持つ前に軽く頭を垂れながら拍手を1回打つ。
- 右手で柄杓を持ち、水をたっぷりと汲み、左手を洗う
- 柄杓を左手に持ち替えて、右手を洗う
- 再び柄杓を右手に持ち替えて、左手の手のひらに水を溜め、口に含みすすいだ後、静かに水を吐き出す
- 左手に水をかけて柄杓を立てて持ち、残った水を柄の部分に伝わせて洗う
- 柄杓を元の位置に戻す
柄杓一杯の水でここまですべてを続けて行うのが美しいとされる。
※2020年秋現在、感染拡大のため手水舎を閉鎖したり柄杓を使わない手水に変わっている神社も多くあります
4 鈴を鳴らす
拝殿に鈴がある場合は鈴を鳴らす。音によって、その場を清め、神様をお迎えする。
※2020年秋現在、感染拡大から参拝の際に鈴を鳴らすのを取り止める神社も多くあります
5 お賽銭をいれる
お賽銭箱に、静かにお賽銭を入れる。
お賽銭に金額の決まりはない。「5円玉を含めると神様とご縁ができる」というのは庶民の間で広まった語呂合わせや験(げん)担ぎ。
軽いご挨拶のつもりでの参拝か、感謝を伝えたりお願いをしたりするためか、その時々で自分で決めた妥当だと思う金額のお賽銭を奉納するのが良い。
6 二拝 二拍手 一拝
「拝」というのは丁寧なお辞儀のこと。腰をしっかりと曲げて深々と、ゆっくりお辞儀をするイメージで。
- 二拝=2回丁寧なお辞儀をして
- 二拍手=2回柏手(かしわで)を打ち
- 一拝=1回丁寧なお辞儀
- このあとに改めて手を合わせて「祈念」。日頃の感謝や自分の決意などを神様にお伝えする。
祈念が終わった後、軽くお辞儀をしてから下がる(このときのお辞儀は「二拝二拍手一拝」には含まれない)。
下がる時も、できれば神様にすぐにお尻を向けない。数歩後ずさりしてから向きを変えて、その場を離れる。
参拝を終えたら、授与所でお札やお守り、御朱印をいただくのも良い。ちなみに、お守りは「買う」とは言わず「いただく」が正解。これらは神様の力が宿った「授与品」(授け与えられるもの)という考え方から神社仏閣ではそのように言う。
間違った参拝の仕方では効果なし?
神社の神職さんからこういう話を聞いた事がある。
「お正月やお祭りの日で『きれいに鈴が鳴らせなかった』『つい参道の真ん中を歩いてしまった』ということだってありますよね。でも、そんなに気にしなくていいです。大切なのは真心。一生懸命、心を込めてお参りをするということが大事」
「例えば、二拝二拍手一拝の作法がまだ広まっていない頃、額が地面についてしまう土下座の姿勢で祈りを捧げる方もいたそうです。これは一般的な参拝作法とは異なるかもしれませんが、でも神様への祈りや畏敬の念は本物の真心ですよね。作法が出来ていないからダメってわけじゃないんですよ。参拝作法というのは。先人たちが生み出した知恵。作法を知っていることで、心を込めやすくなるのではないかと思います」
つまり、参拝作法は「一般常識を知らずに恥をかかないため」というよりも「神社で心を込めてお参りをする」ために考えられたもの。
正直、神様ってなかなか願いを叶えてくれないなぁと思うことだってある。でも神社へ行ってお参りをすることで、自分の希望や決意を再確認できる。自分の心を整える、そんな効果もあるのでは。そんな風に考えて、近くの神社へ「お参り」してみてはどうだろう。
※紹介した「作法」は一般的なもの。神社によっては違う場合があります
構成・イラスト/まつもとりえこ
原文/平井かおる (「日本の神道文化研究会」会員・ライター。著書に『暮らしのしきたりと日本の神様』(双葉社) ほか)
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