私たちが神様仏様へのお願いごとをするとき、よく唱える言葉といえば「ご縁がありますように」。
「そもそも縁って何?」を考えてみた前回に続き、お願い事を叶えていただきたい神様、とくに日本の縁結びの神様たちのことをざっくりと知っておこう。
そもそもお願いしている相手のことも知らずに自分の望みを叶えてもらおうと思うのは、それはやっぱり失礼というものだ。

こちらの記事でざっくりご紹介する、代表的な「縁結びの神様」は以下のとおり。
イザナギノミコトとイサナミノミコト
オオクニヌシノミコト
●サルタヒコノカミ
●ククリヒメノミコト

●スサノオノミコトとクシナダヒメノミコト

初めてきく、良く知らない神様がもしあれば、この機会にぜひ知っておきたい。

 

縁結びにご利益がある神社は「御祭神」がポイント

神社の場合、縁結びにご利益があるかどうかは「御祭神」、その神社にまつられている神様について知ることがカギとなる。
ということで、縁結びのご利益で有名な日本の神様たちについて紹介しよう。
 

日本で最初の夫婦の神様 
イザナギノミコトとイサナミノミコト

日本神話によると、天と地が分かれて世界が始まり最初の神様たちが現れる中で、初めて夫婦となられたのが、男神・イザナキノミコト(伊邪那岐命)と女神・イザナミノミコト(伊邪那美命)だ。
このご夫婦はなんと日本列島をはじめ、海や川、山や風、火と言った自然を司る神々、さらには生産に関わる神々もお生みになり、夫婦の契りを初めて行ったと伝えられる神様である。
そのため、神社での結婚式と関係が深く、神職さんが上げる祝詞には、この夫婦の神様にならって新郎新婦が結婚することをご報告いたします、という趣旨の言葉が入っている場合が多い。
 

縁結び会議を主宰する神様  
オオクニヌシノミコト

お名前だけでわからない人もいるかもしれないが、「出雲大社」の御祭神で、愛称は「大黒さま」。そう聞けば、ピンとくる人が増えるかもしれない。
オオクニヌシノミコト(大国主命)は、そのほかにも、オオナムチノミコト(大己貴命)他、いくつもお名前を持つ神様。国造りと人々の生活基盤を固められた神様として日本各地を回られたという伝説があり、おまつりする神社も本当にたくさんある。
全国的には神無月(かんなづき)だが出雲地方では神有月(かみありづき)と呼ばれる旧暦10月(現在の11月にあたる)、出雲大社のオオクニヌシノミコトのところに全国から神様たちが集まってきて、男女の縁を決める大会議が行われるのだという。
この言い伝えからもわかるように、縁結びの神様の代表格で、最も有名な神様ということもできるだろう。

 

縁を結び、よい道を開く神様  
サルタヒコノカミ

大きなお鼻が特徴的な姿で描かれることの多い、サルタヒコノカミ(猿田彦神)
この神様は、アマテラスオオミカミ(天照大神)の孫神が地上界を治めるために天から降りてきた際に、道案内をしたことから「みちひらきの神様」として名高い。
道を開く、すなわち導きの神でもあり、延命長寿・縁結びなどの御神徳があることでも知られ、全国に二千社余りの猿田彦神社がある。
ちなみにサルタヒコノカミにも奥様がいらして、天岩戸(あめのいわと)の前で踊ってアマテラスオオミカミを誘い出した女神・アメノウズメノカミ。こちらは芸能の神様として知られる。
 

夫婦の仲裁役となる女神  
ククリヒメノミコト

こちらも全国各地にある「白山神社」の御祭神、ククリヒメノミコト(菊理媛命)。美しく聡明な女神で「和合の神様」として知られている。
神様であっても夫婦にケンカは付き物。イザナギノミコトとイザナミノミコトが仲違いをしたときに、仲裁役として登場するのがククリヒメノミコトだ。
具体的にどんなアドバイスだったか、そこは謎に包まれているが、とにかく知恵のある方のようで、イザナギノミコトが感謝し褒めたとされる。
お名前が「括る=くくる」につながることからも、縁結びの神様として古くから信仰されてきた。
 

ともに戦い、結ばれたカップル  
スサノオノミコトとクシナダヒメノミコト

日本神話の中でいくつか描かれる神々の恋愛。なかでも熱くドラマティックに結ばれた夫婦が、このスサノオノミコト(須佐之男命)クシナダヒメノミコト(櫛名田比売命)だ。
日本で最も有名なきょうだいの神様といえば、伊勢神宮の御祭神で太陽の女神アマテラスオオミカミ(天照大神)と、このスサノオノミコト。日本最初の夫婦の神様、イザナギノミコトとイザナミノミコトから生まれた、家族(姉弟)の神様である。
姉神のアマテラスオオミカミは天上界を治め、弟にあたるスサノオノミコトは乱暴者で地上を長くさすらった後、美しい姫・クシナダヒメノミコトと悲しみに沈む老夫婦(姫の両親)と出会う。
そしてヤマタノオロチという恐ろしい大蛇の餌食にされそうになっていた姫を、スサノオノミコトは命がけで戦って救う。姫を育てた両親に結婚の許しを得て夫婦になり、ふたりで暮らす新居をかまえたという伝説から、こちらを日本最古の結婚式とする説もある。
このことから、スサノオノミコトとクシナダヒメノミコトをご祭神とする神社は(代表的なものとしては関東に多い「氷川神社」など)、縁結びの神様として結婚式や安産・子育てのご利益で知られる。

 

このように、「縁結びの神様」と一口にいってもいろんな神様、それぞれに異なる個性とエピソードがあるのが日本の神話の面白いところ。
神社だけではなく、お寺も縁結びのご利益で知られるところはたくさんある。そもそも神社やお寺は、神様仏様と人がご縁を結ぶ、そのための場所だ。

ちなみに、徳部tに神仏の大きな恵みをいただける日のことを「縁日」(えんにち)という。
「縁日」と聞くと、神社やお寺に立ち並ぶ賑やかな屋台のイメージを思い浮かべがちだが、本来はそこに祀られている神様仏様に「ご縁がある日」で、だからこそ多くの人が訪れ、境内や参道に屋台が並ぶようにもなったのだ。

何か具体的なご利益を求めてお参りに行くのもいいけれど、お力を借りたいと思うなら、まずは神様仏様とのご縁結び。縁日に参拝してみるのも良いかもしれない。

 


 

原文/平井かおる(日本の神道文化研究会) 

イラスト/今井未知 www.michiimai.com

 


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