昨年、ひとり旅で沖縄に行きました。
今まで自分が暮らしてきた地域とは違っていることが多くて、いろんなものにびっくりしたことを覚えています。空港から外に出たときの空気が違う。植物も食べものも違うし、言葉も屋根の色も違う。一軒家だけでなく、アパートやマンションにもシーサーがいることや、石敢當(いしがんとう)という魔除けがそこら中に設けられていることに驚きました。まち歩きをするだけで、土地に染み付いた独特の文化や信仰をひしひしと感じるのです。
ガイドブックで紹介される南国リゾート的な側面ももちろんあるけれど、それだけで語るのはもったいない。沖縄の魅力や奥深さをもっと知りたい、と思いました。

首里城近くにある、金城町の石畳。手前にあるのが「石敢當」という魔除け。直進する性質を持つマジムン(魔物)が家に入ってくることを防ぐため、丁字路や三差路の突き当りに設けられている

沖縄の総鎮守・波上宮へ

情報収集を続ける中で知ったのが、「日本一神社が少ないのは沖縄」ということ。そもそも、沖縄に神社があるということ自体びっくりしました。琉球王朝として繁栄した時代やアメリカ統治など、独特の歴史がある沖縄。日本文化の定番テーマである「神社」と簡単に結び付けられなかったのです。
沖縄と本土では、同じ「神社」と言っても違いがあるのではないか……でも、調べてもなかなか情報は出てきません。そこで、沖縄総鎮守・波上宮(なみのうえぐう)の権禰宜・奥原さんに沖縄の神社についてお話を聞いてきました。
波上宮は、珊瑚礁の断崖に建つ神社。沖縄で最も格式の高い神社で、琉球王府に管理されていた「琉球八社」のひとつ。地元民からは「なんみん」と呼ばれ親しまれています。

那覇唯一の砂浜・波の上ビーチに鎮座する波上宮

沖縄に神社が少ない理由

大小合わせると、全国に8万社以上あるという神社。沖縄(本島)には14社しか神社がありません。
なぜ沖縄にはこれほどまでに神社が少ないかというと、「本土では村ごとに神社があるが、沖縄では村ごとに“御嶽(うたき)”があった」から。本土の神社で行うような祭祀は、御嶽で行われていたのだそう。
御嶽とは、神が祀られている祈りの場のこと。基本社殿に類するものは無く、木々が生い茂っているだけということが多いようです。

南城市にある琉球最高の聖地「斎場御嶽(せいふぁうたき)」は、世界遺産にも登録されている。写真は斎場御嶽の奥にある「三庫理(サングーイ)」という拝所。天気が良ければ、神が宿ると言われる久高島をここから望むことができる

奥原さんによると「元々、神社は御嶽のようなものだったと言われている」のだそう。
本土でも、かつては岩や山など自然の中に聖域が設けられていました。時代が下ると聖域にお社が建ち、現在の神社の形になったということ。
対して沖縄の場合は、「祈りの場が原始的な形のまま残った」ということなのです。元々同じような形をしていた信仰の場が、それぞれの場所で違う進化をして残っている。そう考えると、沖縄は“神社が少ない”というより、“御嶽として残っている”と考える方がしっくりくるかもしれません。

沖縄ならではの神社の特徴

波上宮

少ないとはいえ、沖縄にも社殿を持つ神社があります。奥原さんによると「信仰形態としては本土と同じ」ですが、沖縄ならではの特徴がありました。今回は、波上宮の事例をもとにご紹介します。

波上宮の拝殿前に鎮座するシーサー。シーサーは伝説上の生き物で、村や家に来る悪霊を追い払う魔除けの意味を持つ。2匹が対になっており、口を閉じているほうがメスで開いているほうがオスと言われている

波上宮では、シーサーが社殿を守っています。
実は、狛犬とシーサーの起源は同じで“獅子(ライオン)”のこと。本土は朝鮮経由で獅子が伝わっており、“狛”は“朝鮮(高麗)という意味。沖縄には中国経由で伝わったそう。

波上宮の本殿裏にある御嶽(立入禁止)

波上宮の御嶽越しに見える風景

波上宮の裏には、海を臨む御嶽があります(立入禁止)。
琉球には、“海の向こうに神様が住む理想郷がある”という「ニライカナイ」信仰があり、かつてはこの場所から豊漁・豊穣に恵まれた平穏な生活を祈ったのだそう。

祈りの際に使うテーブル

沖縄の神社では、お賽銭箱の横に低いテーブルが置かれている場合があります。これは、人々が神に祈りを捧げるための場所。ウチカビ(沖縄で、あの世で使えるとされているお金)やビンシー(拝み道具が入った木箱)などのお供え物を置いたりします。
沖縄ならではの方法でお祈りをする人々の光景は、珍しくありません。

沖縄は、様々な文化を取り入れる土壌があり、属国関係にあった中国・薩摩、そして本土の文化からも影響を受けています。
例えば、厄年の考え方。沖縄では数え13歳以降は12年ごと(自分の干支の年)に厄年となります。つまり、今年の干支と同じ干支の人は全員厄年。

夕方の波上宮

最後に、奥原さんに“沖縄の神社の参拝方法”を聞いてみました。お答えは、「本土と参拝方法は変わらないので、普段と同じように参拝に来てください」とのこと。沖縄ならではの特徴を押さえつつ、いつもどおりに参拝してみるのが良さそうです。

波上宮以外にも、個性的な神社が沖縄にはたくさんあります。市の天然記念物に登録された鍾乳洞がある普天満宮や、祠だけしかない金武宮など……。
沖縄らしいデザインのお守りや御朱印をいただけるところもあります。神社が好きな方は、沖縄旅行の行程に神社めぐりを入れてみてはいかがでしょうか。

波上宮の御朱印帳には紅型があしらわれ、崖の上から海を見渡す波上宮が描かれている


波上宮 https://hakken-japan.com/shrines/naminouegu/


〈参考〉
・「沖縄の聖地 御嶽 ―神社の起源を問う―」(平凡社新書) 岡谷公二
・「沖縄の神社」(おきなわ文庫) 加治順人


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