ごきげんよう。ライターの、かがたにのりこです。
京都では「大」の文字がフィジカル・ディスタンシングで灯された五山の送り火も終わり、そろそろ秋の気配が訪れても良い頃合いなのですが、今年もそうすんなりとは涼しくなってくれなさそう。冷たいものに、つい手が伸びてしまいます。
最近の私のお気に入りはというと、和菓子の高級材料である葛(くず)を用いた「溶けないアイスキャンディー」。アイスのシャリシャリ感に加え、時間が経つと葛菓子特有のとろんとした食感も楽しめて、しかも溶けにくい万能アイスなのです。特にここ数年、全国的にまちの和菓子屋さんなどでジワジワと広まってきているように感じます。
葛粉と一口に言いましても、一般に売られているものはジャガイモやサツマイモのデンプンやコーンスターチを加えたものが多く、混じり気のない葛粉100%の「本葛(ほんくず)」と呼ばれるものは希少。
お店によって葛アイスキャンディーのサイズや形状、味や製法、使われる葛粉のランクもさまざまで、お値段も1本100円前後から700円くらいまで幅広いようです。
今回ご紹介する「京都・本くず氷」さんは、和菓子屋さんではなく、本葛アイスキャンディーの専門店。清水坂と錦市場にお店を構えるほか、京都工場での小売やお取り寄せにも対応しています。
専門店だけあって、素材選びもリッチ&ヘルシー。
奈良で400年の歴史を誇る「吉野葛本舗 黒川本家」の本葛と、京都の名水「桃の井」を使用。有機アガベシロップや和三盆を、メインとなるフレーバーに合わせて使い分けています。
1本500円〜とお値段もリッチですが、混じり気なしの吉野本葛100%で固めたお菓子と考えると、納得ですね。
保存料や着色料を使用せず、生クリームやゼラチンなども入っていないので、ヘルシー志向の方へのギフトにもおすすめ。溶けにくいのでゆっくり食べることができて満足感が高いのに、1本60〜100kcal程度というのもうれしいです。
京都らしい「宇治抹茶」や、一番人気の「7種のふるーつ」などの定番のほか、錦市場にある店舗からご縁が繋がった地元農家の「うつみ農園のいちご」などの季節の味を加えた、常時6種類ほどのフレーバーを楽しむことができます。
冬期は「ショコラ」や「ふらんぼわーずぜんざい」などがお目見えするそう。
店長さんから「寒い季節には表面を炙ってお出しする商品もあるんですよ」と教えていただき、どうしても食べたくなってしまったわたくし。
持ち帰った「焙煎ほうじ茶黒豆」をガスバーナーで炙ってみました。
木の棒が燃えないように気をつければガスコンロでも大丈夫だそうですので、冬まで待てない方は、ぜひご自宅でお試しください。
表面の霜が一瞬で蒸発し、チリチリと音をさせながらアイスに焼き色がついていく不思議な光景。
和三盆の焦げる、あまくて芳ばしい香り。ぬくもったことで引き立つほうじ茶と黒豆の存在感。
溶けないことが面白くて、少々炙り過ぎてしまったかも…と思ったのですが、苦味はほとんどなく絶妙な仕上がりに。
実はわたくし、「葛まんじゅう」以上に「葛焼き」という和菓子が大好きなのですが、そのふたつのいいとこ取りをしたような、乙な味わいですね。
表面はブリュレのようなシャリ感があり、その下にはとろんとあたたかい本葛のやわらかさ。もちろんアイスのシャリシャリ感も健在です。残暑が厳しい今の時期だけでなく、冬でもゆっくり味わえる楽しみを知れたのは、うれしいハッケンでした。
炎天下の中、清水店から7分ほど歩いて八坂の塔の下まで来てみました。溶けてポタポタと雫が垂れたり、手がベタついたりすることもなく、着物や浴衣での散策のお供にもよさそうです。
今は静かな京都ですが、安心して賑わいの中をそぞろ歩く楽しみが少しでも早く戻りますように。
※この記事は2020年8月の取材原稿にもとづくコラムです。
京都・本くず氷
清水店 京都市東山区清水四丁目168-3
錦店 京都市中京区(錦小路通高倉東入)中魚屋町508
http://honkuzu.kyoto.jp/
通年販売、電話・FAXにてお取り寄せ可
TEL&FAX 075-708-3920(錦店)
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