七五三撮影・写真協力:Dreamin' Dreamer 

秋の神社といえば七五三。晴れ着を着た小さな子どもの手を引いた家族の姿を見かけることも多くなる。
コロナ禍となった2020年以降も、きっと日本全国どこでも変わらない光景。今年も昨年と同様、例年よりも早く8月のうちからスタジオでの前撮りや神社にお参りの予約をした家庭も多いようだ。
では、なぜ七五三? 人生の節目を迎えるお祝いが、決まって三歳・五歳・七歳に行われてきた理由を知っているだろうか?
外出がはばかられる今は、お参りに行くのも止めておいた方がいいのか? せめて記念の写真だけは残そうか?? 
それでは本来の意味からは違うのだと、東京・阿佐ヶ谷の馬橋稲荷神社で禰宜(ねぎ)をされている本橋宣彦さん。神社での結婚式をより良いものにするために活動する「神社挙式研究会」の代表というお立場でもある。
略して「七五三」、正しくは「七五三詣り」の本来の意味とありかたについて、お話を伺った。内容は
●三歳・五歳・七歳、それぞれに意味がある
●参拝の経験で親が子どもに伝えられること
●コロナ禍の七五三詣りで気をつけたいこと

 

三歳・五歳・七歳、それぞれに意味がある

コロナ禍ということもありますが、その前も、昔に比べたら神社に七五三のご参拝にいらっしゃる方はずいぶん減りました。今は「きれいな着物を着て写真を撮ること」が七五三だと思っている方も、かなりいらっしゃるんじゃないでしょうか。

本来、七五三のお祝いというのは「儀式」です。
大昔の日本は食糧事情も悪く、生まれた幼子がちゃんと成長することは簡単なことではなかった。三歳・五歳・七歳、それぞれの年齢まで無事に成長できたことを神様に感謝し、年齢に見合った魂になるための儀式。これが「七五三」なんですね。

「三つ子の魂 百まで」という言葉をご存じでしょうか。三歳までに躾けられたことは百歳まで影響する、つまり人の心の核となるものを培う、それだけ大事な年頃だという意味です。
まだ小さいとはいえ、きちんと躾けられた子は、短時間の儀式にちゃんと座っていられるだけの心ができあがっています。
今は女の子しか三歳のお祝いをしないことが多いですね。それにはどうやら、男の子には着せる着物がないという理由があるようです。
しかし、本来「三つ子の魂」に男女の違いはありません。
専用の着物でなくとも、よそ行きのきちんとした服装であれば大丈夫。男女ともに三歳のお祝いの儀式をしたいものです。

五歳は、男の子のためのお祝い。そこまでは男女区別のない着流しの着物から、ちゃんと男性の正装である袴を着けて行います。
こちらは江戸時代の武家の習いからきたもので、単に「子ども」だった者が「男子」としての教育を始める儀式でした。

これに対して、きものを着て帯を締める、女の子だけのお祝いが七歳。女性としての心と嗜(たしな)みを身に付け始めることを求められます。
男の子の五歳と、女の子の七歳、どちらも意味は同じで「その年齢にふさわしい魂の切り替え時・魂づくり」の儀式です。
ちなみに、昔は「七歳で氏子入り」ともいわれました。「氏子」とは、地域を守る神様である氏神様の子、という意味。つまり、七歳になると地域社会を構成する一員と考えられたわけです。

こうした人生節目の「魂づくり」を、子ども自身が行えるわけではありません。親と大人たちが導きながら儀式を行うことで、その時その時で必要な魂の成長を子どもに伝え、体感させていくのです。
そのためにはまず大人が、人としての核を作っていくことの大切さ、儀式や参拝の意味を正しく知っていないといけません。
七五三詣りに晴れ着を着るのは、本来は神様を喜ばせるため。本人や家族が楽しむというより、神前に連れて行くにふさわしい形として晴れ着があったのです。

参拝の経験で子どもに伝えられること

さて、神社で七五三の参拝をすることで、子どもたちに伝えられることはたくさんあります。

現在の日常生活には「きちんとする」「畏(かしこ)まる」ということが少なくなっていますね。
目にはみえないけれど、そこにいらっしゃる神様に対して畏まり、きちんと心を向けて手を合わせる経験や体感は、人としての核づくりにはとても大事なことです。
この「見えないもの・もの言わぬもの」に対する感性は、私たち日本人がいにしえより持ってきたものでした。

話が少し逸れますが、現代社会の問題点の多くは、こうした感性が失われてきたことが大きな原因ではないのか、と私は思います。だからこそ、子どもたちにはこの目に見えない大切なものへの感性を持っていて欲しいと願います。

ご存知のように、神社では「二拝二拍手一拝」という参拝作法があります。
「拝(はい)」はお辞儀、「拍手(はくしゅ)」はその名の通り、手を合わせて打つこと。「柏手(かしわで)」とも言います。
この作法を、家族ピッタリそろって行うことにもまた意義があります。
親が発する気配を子どもが感じ取り、息を合わせて拝をし、軽やかな響きで柏手を合わせて打つ。柏手は、魂と魂をつなぐ法です。
神様と人、そこに集う人と人。目に見えない気を通して「家族がひとつになる」ことの体験は、子どもの成長のための大きな財産なります。

コロナ禍の七五三詣りで気を付けたいこと

昨年に続き今年も、暦の上では七五三は変わらず11月15日になります。
しかし、曜日や時期・場所・時間帯を選ぶなど、集中を避ける工夫は例年以上に意識する必要があるでしょう。
感染を心配しながら遠出して大きな有名神社まで行くよりも、近くにある地元の氏神様で家族だけのお参りというのもよろしいのではないでしょうか。

馬橋稲荷神社は決して大きな神社ではありませんが、電話やメールで予約をいただいて、七五三のご祈祷は一組ずつ丁寧に行っています。
そのような考え方の神社は、全国どこでも、多くの地域で、きっと周りに見つかるはずです。
感染防止の対策は、どちらの神社でもきちんとされていると思います。神職は、参拝の方々と対面でお話するときにはマスクを着用し、拝殿では通気性をいつも以上に意識しながらご祈祷をしています。

ちなみに、私は祝詞(のりと)をあげる時にはマスクをしません。祝詞は、参列者との会話ではなく、目には見えないけれどそこにいらっしゃる神様に向かってお伝えをする、そのための言葉ですから。


※記事は2019年秋に実施したインタビュー原稿に2020年、編集部が追加取材により再構成したものです。


お話を伺った人:本橋宣彦さん
神前結婚式の普及と活性化を目指す神職と企業関係者による「神社挙式研究会」代表。馬橋稲荷神社(東京・杉並区)禰宜

 


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