2020年も残すところあとわずかとなりました。
これまでとは違う心持ちの年の瀬、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

久し振りに会う友人とお茶をしながら思う存分お喋りしたり、仕事仲間や親戚たちとお鍋を囲んだり、そんな日々が特段なこととは思わずに過ごしていた一年前の年末。
来たる年がこのような年になるとは想像も出来ませんでした。

人の世はたった1つのウイルスに翻弄され続けましたが、自然の流れは不思議と穏やかだったように思います。
いつもは慌ただしく過ぎてしまう春と秋が久し振りにゆっくりと感じられたり、季節の変わり目の空気を敏感に察知できたのは、ステイホームで物理的に時間が増えたこと以外に、留まることで見えてきたものや感情があったのではないかと、自身の一年を振り返っているところです。


さて、年の最後にお届けする日本の伝統色は、来年に向けて何か力になるような、そんな色にしたいと考えました。今回の伝統色は「東雲色(しののめいろ)」です。

東雲とは明け方、闇夜から次第に明るんでゆく東の空やその時間を表す言葉です。曙(あけぼの)の別名で、一般的には曙色と表されることが多い色ですが、東雲色の響きが好きなのと、あと、これは文字から来る個人的なイメージなのですが、曙よりも東雲の方が、より「明けはじめ感」が感じられるというか。なので、こちらを選びました。

一日が終わり、また新しい一日が始まる時に陽の光が作り出す色。闇と光が溶け合って出来る神秘的なグラデーションの、明るんでゆく部分の空を模した色だと思われます。太陽の温かみを感じる薄オレンジ色に、ほんの少し夜の足跡が残っているような、複雑で奥行きのある色ですね。


人は長い歴史の中で、夜明けの光に幾度となく励まされてきたことでしょう。「明けない夜は無い」とはありきたりな表現かもしれませんが、今はその言葉を支えにしたいと強く思いますし、有り難い気持ちです。

コロナの影響で日本各地のあらゆる行事や祭りが取りやめられることになり、毎年見て来た風景が見られないことに寂しさを覚えましたが、当たり前が「無いこと」を経験するのは、私にとって大きな意味がありました。
一日も早く事態が収束し、日本の美しいモノやコトを皆で分かちあえる日が来ることを心より願っています。

皆さま、どうかお体を大切に。温かくして年末年始をお過ごしください。


イラストと原稿/辻 ヒロミ
イラストレーター。京都生まれ、京都育ち。幼少期より祖父の影響で絵を描き始める。着物に独自の感性を取り入れた美人画を中心に、食・旅・伝統文化など幅広く描く。フリーランス女子3人で結成した「ことり会」で京都情報を発信し、2017年に京都本「京都、朝あるき」を出版。


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