2020年2月に開催されたクリエイティブの祭典「rooms40」を取材、そこで全体的に目立っていたテーマが「SDGs」。
日本語に訳すと「持続可能な開発目標」の意味で、2015年9月の国連サミットで採択された17項目の国際目標のこと。世界各国に広がりを見せているテーマで、いまや意識の高い若者やクリエイターの共通関心事ともいえるだろう。今回イベントに出展したブランドの多くが、そこを意識して企画していたように思う。
そもそも、日本文化そのものが元祖サステナブル(持続可能)ともいえるのではないだろうか。
着物をアップサイクルするファッションブランドを紹介した第1弾に続いて、日本各地の豊かな自然や伝統文化を生かすことから生まれた、個性的で楽しい新しい感覚の工芸ブランドを紹介する。
作家やデザインを選べる有田焼のちいさなくま「momoco」/佐賀県有田町
400年の歴史をもつ磁器、有田焼職人の技術や作家のセンスをモダンで柔らかなくまのフォルムに表現したインテリアコレクション「momoco」。
現代のインテリアにもするりと溶け込み、まるで見守るようにそこに居てくれる姿は、癒しすら感じる。お祝いの贈り物や、人生の記念に手に入れたい小さな宝物
かわいらしいボディに、さまざまな作家や窯元が願いを込めて、それぞれの得意な技法を施した「momoco bear」は、手がけたアーティストによって全く違う表情を見せるのが面白い。プロデュースは有田焼の老舗商社、賞美堂本店。帝国ホテル内のショップとオンラインでも購入できる。
くまは英語でbear、「生む」「育てる」などの意味をもつことから、出産祝いなどお祝いの品にも喜ばれそうだ。
momoco http://momocoarita.com/
くすみパステルが今っぽく可愛い漆器「sibo(シボ)」/石川県加賀市
ハレの日用の高級な食器というイメージが強い山中漆器(しっき)を日常使いしてほしい、という思いから生まれた「sibo(シボ)」シリーズ。
現代の食卓に似合うモダンなフォルムとくすみパステルのカラーが特徴だ。
「sibo」は、石川県加賀市は山中温泉で約50年ほど、地元名産の伝統工芸品である漆器を中心に、丸物木地をつくってきた「白鷺木工」のオリジナルブランド
丈夫で毎日使えて、しかも手ごろな価格で提供できるよう、試行錯誤してたどり着いたのが「絞漆(しぼうるし)」という伝統的な変わり塗りの技法だったそう。
最近の漆器はプラスチックなどを添付することも多いなか、siboシリーズは選び抜いた国産の天然木を使い、漆にタンパク質を混ぜる工程では地元・山中温泉の豆腐を使用。
そのせいか、今っぽい見た目でありながらも、同時にどこか落ち着く懐かしさを感じられる。
白鷺木工 https://www.shirasagi-mk.com/
自然素材の浄化パワーで美しく「ANDIZUMO(アンディズモ)」/出雲市大社町
出雲の化粧せっけんのブランド「ANDIZUMO(アンディズモ)」。
自然のパワーをそのまま封じ込めるコールドプロセス製法を採用し、肌だけでなく自分自身の力と美しさを取り戻してほしい、という願いを込めて作られている。
大阪のコスメカンパニーが地元企業とコラボし、ひまわりオイルやハトムギ、小豆に、出雲で抽出したゴマオイルや酒かすなど、出雲と近郊の自然の中で採れた食品用素材を使用
古来より小豆には魔除けと浄化作用があると言われているが、その小豆を石鹸に入れることで肌の調子を整え、良縁を引き寄せることを願った「縁結び石けん」や、新月の出雲の海で採った海水から作った塩を入れた「お浄め石けん」など、出雲らしいネーミングにも注目。
洗うほどに小豆や塩のパワーで清められ、運気も上がりそう。
レギュラーアイテムはもちろん、夏なら体を冷やし、冬には温めるという風に、それぞれの季節に最適な旬真っ盛りの食材でつくる、シーズナルアイテムも見逃せない
ANDIZUMO https://elinc.jp/
ありそうでなかったお米のギフト「コメタブ」/茨城県土浦市
お礼やご挨拶の品にお米、ありそうでなかった新提案だ。お米をコンパクトなタブレット型に真空包装した新しいカタチのギフト、「
パッケージは30種類のオリジナルデザインからチョイスできるほか、自身で自由にデザインすることも可能だ。
結婚式のプチギフトや海外へのお土産、企業のノベルティなど、多彩な使い方ができる。タブレットの他、ころんとしたキューブ型もある
中身のお米は、江戸時代の創業時から160年以上も米を磨き続けてきた茨城の老舗「田島屋」が厳選。全国各地の銘柄と、地元・茨城県土浦市にある八坂神社のご祈祷米を選ぶことができる。
米は日本人にとって古来から神様が宿るという縁起の良い食べ物。用途はさまざまだが、お祝い事にぴったりだ
「ささやかだけど、嬉しい」という言葉にぴったりのコメタブ。何より、日本人ならばもらって困る人はまずいないというのが最強の魅力かも。
コメタブ http://kometab.com/
島の自然を都会に届けるエシカルアクセサリー「kikirico(キキリコ)」/長崎県壱岐市
長崎県の離島、壱岐で生まれ育ったデザイナーが立ち上げたアクセサリーブランド「kikirico(キキリコ)」。
デザインの力で島を活性化したい、という思いから始まった「kikirico」。コンセプトは「ちょっとおもしろく、ちょっとしみじみするアクセサリー」
島の人は都会に憧れ、都会の人は田舎に憧れる。だから島に当たり前にあるものを使い、都会のファッションに馴染むようなデザインで。どちらにも「非日常」を感じてもらえるようなアクセサリーを提案しているそう。
「エシカル」「再生」をテーマに、バロックパール(歪みのあるパール)をはじめ、飲食店で出たアワビの殻やシーグラスなどをアクセサリーへとアップサイクル。
アワビの殻を綺麗にくりぬいてつくられたピアス。素材が飲食店から出たというストーリーから、ハシでつまみ上げたようなデザインに
素材が持つ自然な質感を活かしつつ、ナチュラルテイストに傾きすぎず、品のある洗練されたムードとの絶妙なバランスが魅力だ。
Kikirico https://www.kikirico.net
清水焼×和菓子の技法を世界に「紅村窯(こうそんがま)」/京都市東山区
京都を代表する伝統工芸品のひとつである京焼・清水焼。100年以上続く「紅村窯(こうそんがま)」から、2016年に誕生した全く新しい技法が「土鋏(つちばさみ)」だ。
和菓子の「はさみ菊」のような緻密な装飾が美しいお菓子入れ
和菓子の伝統技術にインスパイアされた「土鋏」という全く新しい技術を生み出したのは、紅村窯当代の娘で四代目となる林侑子さん。
刻一刻と乾いていく陶器の表面を、眉毛用の鋏を使いフリーハンドで切って細工する「土鋏」は、ささいな失敗も許されない繊細な作業だ。
盛られた食材を美しく引き立てるよう、土鋏をワンポイントにあしらったシンプルな皿
食器だけでなく照明など、女性作家らしい柔軟な感性が光る作品を世界に向けて発表を続けている。今後の展開が楽しみなブランドだ。
印象的だったのは、培われてきた伝統技術や文化をリスペクトし大切にしながら、想像のその先へ、新しく創造していく姿勢。rooms40で出会えた各地の工芸ブランドは、日本の魅力を再認識させてくれると同時に、新しく元気をもらえるものばかりだった。
まだ世に知られていないだけで他にもいいものは、きっと各地にたくさんあるはず。ハッケン!ジャパンでは、今後も「UNKNOWN JAPAN」にこだわって発信をつづけていきたい。
取材協力/rooms
https://www.roomsroom.com/
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