ごきげんよう。

日に日に花開く桜を愛でながら街に繰り出す、のんべぇライター椿屋です。

別れあれば出逢いありの春。

花見と聞けば酒宴と脳内変換される「花より団子」の季節がやってまいりました。旬のホタルイカにあさりにしらす、名残の真牡蠣に走りののれそれ……、春は海の幸も豊富。安くて美味しいのは、鮮度はもちろん確かな目利きがあってこそ!

今回は、近隣の主婦から親しまれ、お弁当目当てのビジネスマンが日参する魚屋さんが、日が暮れると鮮魚バルになるという一風変わったお店をご紹介します。昼夜で違った顔を持つ二毛作スタイルの先駆け的存在でもある「西村鮮魚店」さんです。

ここは烏丸六角を西へと進んだとあるマンションの1階。魚のショーケースの横のエントランス側に夜の入口はあります。

細長い店内は、8人座ればいっぱいになるカウンターのみのバル仕様。店主の三村さん親子は、この地にお店を構えて15年。魚屋はお父様が、バルは息子さんが営んでいるのです。

「以前は太秦の方で鮮魚店をやってたんですが、親父がそろそろ店を畳もうかと言い出したのが15年前。辞めてどうするのかと訊けば、スーパーにでも働きに出ると。正直、それは無理やろと思いましたね(笑)。根っから職人気質の人ですから」と、息子の卓矢さん(通称ミムさん)。

「飲食業界で働いてたこともあって、それなら夜は親父が仕入れてきた魚を使った酒場をやろうと。その前提で、この場所に移ったんです」

開店準備の仕上げは、毎日のメニュー書き。冷蔵庫を覗きながら、その場で献立を決め、細長い黒板に価格を書き込んでいく

旬の鮮魚はもちろんのこと、今は亡きお母様から受け継いだおばんざいも定番メニュー。日替わりで5種類。「ちょっとずつ盛り合わせ」てくれるのもうれしい

好きなものを好きなように頼めるので、この日は(左から)「大根葉とおじゃこ」「れんこんのきんぴら」「さんどまめのごま和え」の3種盛りで

忘れちゃいけないお造り。「適当に盛って」がいつものオーダーです

ここ数年は、お互いの呼吸が合ってきて、メモ書きや伝言がなくても献立に困らなくなったというミムさんですが、「最初の頃はそりゃあ、いろいろ衝突もありましたよ(苦笑)。最近では、使ってほしくない魚はラップでぐるぐる巻きにされてたり。何年もやってきて、やっと上手いこと譲り合えるようになったんちゃうかな」と、苦笑い。

「それでも、まだ魚の目利きについては親父には全然敵いません。父親の格好いい仕事を身近で見る環境はありがたいですね。親父は口下手ですけど、ぼくはまあまあしゃべるのが好きなんで、こうやってカウンター越しに一人でも多くのお客さんに魚の美味しさや食べ方をお伝えできたら、と思ってます」

ぷりっぷりの牡蠣は昆布焼きで。目の前に置かれた七輪でゆっくりと火が通っていく様子を眺めながらの一献もオツなもの

薄くスライスした玉ねぎといただくのがミムさん流。クリーミーな牡蠣と交互に食べると、口の中がすっきりリセットされて、牡蠣そのものの旨みをより深く味わえる

〆は、土鍋ならぬ「鉄鍋で炊いたごはん」。炊き上がるまで40分かかるので、逆算して頼むべし

ツヤふわごはんのおともは、明太子一択!メニューに無くても「今日、あれある?」と訊けば、大抵「あるで」と出てくる。表面炙って香ばしく、中は生が椿屋好み

この日は、隣に並んだ常連さんたちも仲良く一緒に明太子&ごはん。箸が止まりません!

季節の移ろいを魚で知る――海のない都だからこそ、こういうお店は貴重です。そして、味だけに留まらず、昨年から始めた脱プラ活動を通した心意気にも共感しきり。「魚で商いさせてもらってるからには環境について知らん顔はできません。まずは自分たちで出来ることから。お弁当の容器をプラスティック製品から紙製に変えたり、酒瓶の緩衝材の代わりに使い古したグラス拭きで作った袋を使ったり。多少コストや時間がかかっても、大事にせなあかんことはあると思います」

想いを知って食すものは、また違った感動を生みます。野菜でもなく肉でもなく、「魚食べたい!」という口になった日は、ぜひ西村鮮魚店のドアを開けてみてください。それでは、千鳥足でごめんあそばせ~。


西村鮮魚店

京都市中京区新町通六角東入ル玉蔵町 スペリオン四条烏丸1階

18:30~24:00(LO 23:30)/日曜休


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