ごきげんよう。
ライターの、かがたにのりこです。
2021年は桜の開花が早かったですね。
この開花を知らせる桜前線の観測にはソメイヨシノが使われるそうですが、これはソメイヨシノが実生では育てることができず、ほとんどの個体が接ぎ木によって増やされた品種だから。
平たくいえば、遺伝子的にほぼ同じ桜が全国にあるということ。
周囲の環境に対する反応が同じクローンだから、桜前線は暖かい地域から次第に北上していくのだそうです。
一方、桜もちなどに使われるのはオオシマザクラという品種の葉っぱ。
私たちが「さくら味」だと思っているのは、この葉っぱの塩漬けのお味なんです。
さくら味の和菓子はいろいろありますが、本日は京都・甘春堂本店の雅な「貝合せ」をご紹介いたします。
鴨川沿いの川端通り正面に慶応元年より店を構える、こちらの甘春堂さん。
京菓子の店として創業される前は、今よりも川幅のあった鴨川で渡し船などを担う「藤屋」という船宿だったそうです。
暖簾の染め抜き紋に上り藤が使われているのは、その名残。
元「藤のお宿」だなんて、鬼とか滅とかの界隈の皆さんにも訪れていただきたくなってしまいますね。
さて、話を戻しまして。
「貝合せ」とは平安時代末期から行われている雅な遊戯。
絵付けされたハマグリの貝殻を対になるように合わせていきます。
「当店の貝合せにも本物のハマグリの貝殻を使用しています。元々はお雛様の時期におつくりしていたお菓子なのですが、お客様の要望でだんだんと販売時期が長くなり、季節に合わせて風味の異なる餡を入れてお出しするようになりました」
と、7代目社長の木ノ下さん。
春は刻んだ桜の葉で風味をつけた自家製白あんをほんのり桜色に染めています。
そして、なんと粋な…!と驚いたのが、社長から教えてもらったその食べ方。
蓋側の貝殻を匙がわりにして掬っていただきます。
さくら餡のまわりを包み込むのは、葛とわらび粉を練ったぷるんと透明な生地。
「貝合せというテーマを表現するに当たって、やはり昔ながらの材料がふさわしいと考え、葛とわらび粉を使っています。葛だけだと冷蔵には向かないのですが、わらび粉を合わせることで、常温でも冷やしても召し上がっていただけるようになっています」
葛きりとわらびもちのいいとこ取りのような独特な食感で、歯切れの良さもありながら、こんな風にとろんと伸びることも。
ゼリーや寒天のクリアな透明感とは違い、磨りガラスのような奥ゆかしい透け感も、さくら色の餡をいっそう愛らしく見せてくれる気がします。
お皿やスプーンも不要で、常温でも冷やしてもおいしいなんて、ご近所花見にもおあつらえ向きだわ!と早咲きの桜を求めて川沿いをぶらり。
行きつけの服屋の店長さんにもおすそ分け。
この食べ方、誰かに教えたくなること間違いなしです。
2020年はおうちの中で花見をしていましたが、今年からは一歩外に出てみませんか。
手のひらサイズの愛らしい春を携えて。
貝合せ 1個465円(税込) ※オンラインショップで取り寄せ可能
甘春堂 本店
https://shop.kanshundo.co.jp/
【おすすめ記事】