まん延防止重点措置、あけましておめでとうございます。
ライターの、かがたにのりこです。

令和4年3月21日をもって、全ての都道府県で「まん防」が終了しました。もちろん、終了後も引き続き、感染拡大防止への対策はしていかなければなりませんが。
二度の期間延長もあったので、春の訪れとともに、いよいよ色んなことが動き出す、そんな気配がいたします。

私もストップしていた仕事が一気に動き出し、忙しさマックス…!
原稿に向き合っている時間は果てしなく長く感じるのに、1週間の体感時間は15分の朝ドラダイジェスト並みに短く、台所にたつ時間も惜しい有様。
嗚呼…なのに、そういう時こそおいしいものをいただきたいんですよね。

しかし、今、我が家の冷蔵庫・冷凍庫には最強の助っ人がおわしますのですよ。むふふふ。

その助っ人とは、「西京漬(さいきょうづけ)」。
忙しい(時ほど、絶対においしいものが食べたい私のような)人にこそおすすめしたい、京都の伝統食です。

西京漬とは、味噌漬けの一種で西京味噌をベースに、味醂や酒などを加えた「漬け床」に魚や肉を漬け込んだ保存食のこと。これを焼いたものを「西京焼」と呼びます。

さて、この西京漬に欠かせない西京味噌。
今から約200年前、京都で誕生した味噌です。丹波屋茂助という丹波杜氏が、宮中からの用命を受けて料理用の味噌を吟醸し、献上したのが始まりで、京都の味噌なのに「西京」と呼ぶのは、明治維新により都が江戸へ遷り「東京」と呼ばれたのに対し、京都を「西京」と呼んだことからだそうです。

関西ではスーパーの味噌コーナーに「西京味噌」と「白味噌」の両方が並んでいるのですが、実は西京味噌も白味噌の一種で製造方法は同じ。
ただし、商品名に「西京味噌」と表記できるのは、京都味噌協同組合が定める定義に則って作られたもののみ!

西京味噌の定義は以下の通り。

・企業が組合に所属している
・組合が認定する材料を使用し、京都府内で製造している
・組合から認定を受けた、低塩で甘口の味噌である
・京都府内創業50年以上、もしくは味噌技能士1級以上の技術者が在職している、もしくは全国味噌協同組合連合会主催の鑑評会で表彰されたか、それと同等の製造技術があること

つまり、西京味噌は選ばれし白味噌、といったところでしょうか。

一般的に赤味噌が長期熟成なのに対し、白味噌の熟成期間は短期間です。 使用する米麹の量が赤味噌より多く、塩分が少ないことから甘口の仕上がりが特徴。もちろん、塩分濃度が低い分、赤味噌に比べると保存期間も短期間になります。
以前、話を伺った味噌メーカーの方いわく、「行事の多い宮中ではとにかく味噌の消費量が多かったと思います。味噌が切れたなんてことはあってはいけなかったでしょうから、一度に仕込んで長期熟成させる赤味噌ではなく、短期熟成でこまめに仕込むことができる白味噌の製造法も宮中では喜ばれたでしょうね」とのこと。

白味噌は京都で暮らしてみると、口にする機会が多く、和菓子も例外ではありません。

お正月の花びら餅、5月の柏餅には白味噌あんが欠かせませんし、以前こちらでもご紹介した祇園祭にゆかりのある「祇園ちご餅」も白味噌あんでした。今宮神社の門前で人気の「あぶり餅」にも、とろりとした白味噌のタレが塗られています。司馬遼太郎の小説『燃えよ剣』にも登場する「松風」というお菓子も白味噌が効いた独特の風味が魅力の一品。

もはや白味噌や西京味噌なしには食文化を語れない京都なのですが、そこに暮らす友人たちが口を揃えておすすめするのが、西京漬の名店「京都一の傳」。
錦市場からほど近い本店では、1階でお買い物ができるだけでなく、2階に食事処も併設。西京漬デビューがまだの方なら、まずはお昼の月替わりコースで西京漬の正解を味わうのもよいのでは。

旬が感じられるコース料理は日本酒とのペアリングも用意されており、一卓ずつ土鍋で炊き立てが供されるご飯もツヤツヤ。しかも、その全てがメインである西京焼のためのプレリュードという贅沢。

まもなく創業100年を迎える老舗秘伝の西京漬は、昔ながらの「本漬け」と呼ばれる製法で作られているそう。季節や温度、魚の種類や形にまで合わせて漬け込み時間を変え、旨味を最大に引き出すのが職人の技。一度食べれば、虜となること間違いなしです。

それでも百貨店などに出店していると、観光で来られている方や若い方には、「西京漬って漬物ですか?」「西京焼って陶器ですか?」と聞かれることもあるそうで、もっと広く、暮らしの中に西京漬の食文化を根付かせたいとの想いを抱えておられた、京都一の傳さん。

常連さんから多かった「いい感じの魚の盛り皿ってなかなか見つからない」との声をヒントに、なんとお家で西京漬を楽しんでいただくための魚皿&西京漬セットまで数量限定で作ってしまったというから、驚きです。

清水焼の人気ブランド「TOKINOHA」とのコラボレーションで誕生したシンプルなフラットプレートは、西京焼はもちろんのこと、和食・洋食・和菓子・洋菓子問わずスタイリッシュに楽しめそう。発売するなり、あっという間に完売してしまい、再入荷の予定は無しとのことですが、こうした素敵なコラボレーションを今後も展開していかれることを個人的にはとても期待しています。

これまで目上の方へのギフトとして選びがちだった西京漬ですが、若い方への結婚祝いや新生活祝いなどにも差し上げたくなりますね。そもそも京都では小学校の給食の献立にもなるくらい、子どもたちにもウケの良いおいしさですから、先様の反応も心配ご無用です。

ご飯によし、お酒によし。
忙しい時もこれが冷蔵庫や冷凍庫にストックされているだけで心に余裕が生まれるってもんです。
まろやかな旨味ととろけるような舌触りは冷めてもおいしくいただけるので、お弁当に入れて、今年こそお花見に出かけてみてはいかがでしょう。もちろん、お花見団子もお忘れなく!

 

京都一の傳
https://www.ichinoden.jp/

 


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