目黒といえば雅叙園。なかでも東京都指定有形文化財でもある「百段階段」は、ミュージアムホテルを象徴する有名な場所。ホテル雅叙園東京になってからまだ行ったことがないという人は、この機会にぜひ。 昭和初期から館内に現存する木造建築で、99段の階段の横に点在する貴重な日本画作品が描かれた和室を舞台に10年前から開催されている「百段雛まつり」。日本各地の歴史と由緒あるお雛様が毎年テーマ別に大集合。2019年は青森・秋田・山形から来たお雛様たちに会える。

青森県八戸市/遠藤家のお雛さま

歴史の趣ある和室に段飾りのお雛様が並ぶだけでも壮観だが、ひとくちに雛人形といっても大きさや人形の表情、衣裳や装飾品、飾り方などバリエーションはさまざまある。たとえば、東北地方は位置的に江戸文化の影響を受けた「関東雛」かと思いきや、意外に上方風の人形も多い。江戸時代から明治時代にかけて日本海を運行した「北前船」(きたまえぶね)によって京都とのつながりが深い地方や商家も多かったのだという、初めて知る事実。

関東雛

京雛

お江戸の「関東雛」の特徴は、一般的に目が大きめでふっくらした輪郭の可愛い系。手は袖に隠れている。それに対して西の「京雛」は、目が細めで鼻筋が通ったクールビューティ。手は袖から出ている。見分け方を教わると一目瞭然。 男女の人形が並んで座るポジションも、関東雛と京雛では逆。関東では西洋から伝わった外交上儀礼の「右上位」にならっていて(人形側から見た位置で右が女性)、京都では「左上位」。日本古来の考え方をいまも大事にしている。実際には、その時どきの流行や発注者の好みなどから「関東雛」「京雛」の特徴がミックスされている場合も多々ある。こういった点に注目しながら、じっくりお雛様を眺めてみると興味深い。雛まつりは女の子の祭事だが、歴史や美術が好きな男性も、きっと楽しいはずだ。

青森県八戸市/遠藤家のお雛さま、三人官女

お内裏様とお雛様だけではない。三人官女や五人囃子などのサブキャラたちが表情豊かで面白い。まるで漫画の「ジョジョの奇妙な冒険」のようなジョジョ立ちをしている三人官女、いきいきと楽しそうに管楽器を弾く楽人たち、七福神の寿老人が童人形になって登場していたりと、人形たちはどれもとても個性的。各家歴代の持ち主も、こうしたこだわりの細部を見ては毎年顔をほころばせていたに違いないと想像してしまう。

秋田県由利本荘市/本荘藩主 六郷家の極小雛道具

雛道具にも注目したい。特に、秋田・由利本荘の藩主、六郷政鑑が娘の婚礼のために作らせたという極小の雛道具が圧巻! 爪に乗りそうなほど小さいのに黒漆に牡丹唐草の金蒔絵がしっかりと施された本格的な仕様。つるし飾りや雛菓子にも工夫が凝らされている

山形県酒田市/日本三大つるし飾りの「傘福」と、老舗菓子司「小松屋」お雛菓子の展示

保存建築の美しさと、東北各地の雛まつり文化を同時に堪能できる「百段雛まつり」。2019年は3月10日までの開催で終盤や土日は混雑必至。平日の昼間が比較的ゆっくり見られそう。また、展示品保護のため会場内は暖房を控えているので、温かい服装で出かけよう。当日券は1500円で正面玄関横の受付で販売されているほか、お得な前売り券や(売り切れる場合あり)入場券付ランチセットも用意されているので、友達や家族と行くのもおすすめ。


百段雛まつり 青森・秋田・山形ひな紀行
開催期間 2019年3月10日(日) まで/会期中無休/10:00 - 17:00(最終入館16:30)
※終了
イベント特設サイト


ホテル雅叙園東京
東京都目黒区下目黒1-8-1
TEL:03-3491-4111 公式サイト


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