「虎屋文庫の羊羹・YOKAN」展は、とらや赤坂店地下1階「虎屋 赤坂ギャラリー」で2019年11月1日~12月10日まで開催 ※終了

室町時代後期の創業で老舗中の老舗とも呼ぶべき和菓子店、とらや。2018年10月にリニューアルオープンした赤坂店は、ガラス張りの外観が目印。9階建てだった旧ビルから低層の建物に変わり、来店客がゆったりとした居心地の良さを感じられる空間となっている。
ここ赤坂店で、「虎屋文庫の羊羹・YOKAN」展が開催中だ。とらやの菓子資料室である虎屋文庫にとってはリニューアル後初となる企画展を取材。その見どころを3つ紹介しよう。

【其の壱】知りたい意欲が高まる!羊羹の意外なルーツと歴史

虎屋文庫の企画展では、実物の手作り和菓子が展示されているのが特徴。今回の企画展でも、とらやの和菓子はもちろん、過去の時代の羊羹を再現した実物の展示を目にすることができる。

日本を代表する和菓子のひとつ、羊羹。甘いお菓子なのに、なぜ羊(ひつじ)という漢字が使われているのだろう? 

羊羹の起源は中国。もとは文字通り「羊の羹(あつもの)」、つまり羊肉入りスープで、鎌倉~室町時代に留学した禅宗の僧侶らが中国から持ち帰ったのが、日本の羊羹のルーツ。

禅僧は肉食が禁じられていたため、小豆など植物性の原料を使い羊肉に見立てた精進料理の汁物を作ったと伝えられている。

ルーツとなる羊の羹(スープ)をはじめ各時代の羊羹を再現、展示されている

その後、汁と具を別々にした羊羹、さらに汁なしの羊羹から菓子の羊羹へと変遷を遂げ、江戸時代には今の羊羹に近いかたちになり、和菓子としてほぼ完成したのだった。

【其の弐】時代を反映する「とらやの羊羹」コレクションは必見!

とらやの羊羹というと、親しまれてきた味わいはもちろん、パッケージの美しさから手土産として愛用している人も多いはず。とらやの羊羹の歩みを知ることのできる展示ブースでは、歴代のパッケージがずらり。

戦後、輸出用としてハワイやアメリカ占領下の沖縄などに送られた缶詰羊羹、昭和40年代に最先端だったというプラスチックケースに収められた羊羹も。

最近の未来を感じさせるフォルムの羊羹や東京2020オリンピックエンブレム羊羹などが並ぶ楽しい展示に、いつの時代も愛されてきた「とらやの羊羹」の歴史を見ることができる。

元禄8年(1695年)のとらやの菓子見本帳(現在の商品カタログにあたる)。左から3番目に300年以上前の羊羹の絵図も見られる

レトロかわいいパッケージの昭和28~35年(1953~60年)頃の輸出用缶詰羊羹。中身は、とらやを代表する銘菓「夜の梅」

【其の参】参加・体験型の楽しい展示、「羊羹あれこれ」

羊羹の歴史、とらやの歩みを学んだ後は、羊羹のユニークな情報を集めた「羊羹あれこれ」に進もう。
江戸時代の黄表紙(現在の漫画に相当)で1778年刊行の「名代干菓子山殿」(めいだいひがしやまどの)に登場する菓子を擬人化して描かれた元祖・羊羹キャラクターの「羊羹和尚」、おなじみのアニメの羊羹キャラクター、全国各地の羊羹フードなど、まさに羊羹トリビアを大公開。
気に入った展示物に「いいね!」が押せるボタンが用意され、遊び心も満載だ。

江戸時代の漫画キャラクター「羊羹和尚」、頭にのせているのは羊羹! 展示会場入口のフォトスポットで、羊羹和尚と一緒に撮影もできる

このほかにも興味深いコーナーはまだまだあるので、ぜひ足を運んで直接体感してほしい。
羊羹が大好きな人も、普段なじみがない人にも楽しめる「虎屋文庫の羊羹・YOKAN」展の会期は12月10日(火)まで! ※終了
展示を楽しんだ後は3階にある虎屋菓寮で期間限定の和菓子や赤坂店限定の菓子を味わい、余韻に浸るのも良いだろう。


取材協力/虎屋文庫 https://www.toraya-group.co.jp/toraya/bunko/

虎屋文庫は昭和48年創設。長年宮中の御用を勤めてきたとらやには貴重な菓子の見本帳や古文書、古器物などが多数あり、これらを保存・整理するとともに様々な菓子資料を収集し、展示の開催や機関誌の発行などを通して和菓子の情報を発信する活動を行っている。


取材・文/濱岡操緒(ハッケン!ジャパン編集部)