海苔といえば、おにぎり。関東ではおにぎりに焼き海苔が主流だが、関西では味付け海苔が主流で、コンビニでも味付け海苔のおにぎりが売られているという。 しかし、この味付け海苔のルーツは関西ではなく、お江戸日本橋にある。
明治天皇が京都御所へ行幸される際の「東京土産」として、山本海苔店でつくられたのがはじまりだという。江戸時代に創業されて以来、海苔ひとすじの老舗だ。

そんな山本海苔店で1月に行われた今年の「新海苔を味わう会」に参加した。海苔鍋や海苔サラダ、手作りの太巻きなどが振る舞われた。サラダの上にたっぷりの新海苔を乗せた海苔サラダの美味しかったこと!いずれも簡単なので家でもマネできそうだ。

海苔の食べ比べもさせてもらった。 いつも食べている海苔と新海苔は、どこが違うのか、下の写真でわかるだろうか?

こちらが早摘みされた新海苔。ふつうの海苔だってじゅうぶん美味しいけれど、口に入れると違いは歴然。柔らかくて口溶けが良く、海苔の香りがフワッと広がる感じがした。

その冬最初に養殖用の網から摘まれた柔らかい一番摘みの海苔が、主に進物用として使用され、「新海苔」と呼ばれる。
一番摘みのあとも、下についている小さな海苔の芽が伸びてきて10~15日後には再び摘める大きさに成長する。そうやって採取を重ねるごとに硬さが増していき、味や食感の違いになるのだそうだ。

画像提供/山本海苔店

今年の「新海苔を味わう会」では、海苔メニュー以外に海苔の歴史や栄養面なども教えていただいた。
なかでも興味深かったのは、海苔の歴史について。
縄文時代にはすでに、海から採ってきた生海苔が食されていたらしい。
やがて、干したものが食べられるようになっていくが、天然物の海苔は冬にしか採れない貴重品のため、江戸時代まで海苔は高級食材だった。
江戸幕府を開いた将軍・徳川家康も大好きだったそうで、幕府のサポートを受けて海苔の養殖が東京湾でスタート。江戸・東京の特産物になっていく。
そして十代将軍・徳川家治の頃、浅草で再生紙の生産技術を海苔に応用し簀(す)で漉いた四角い板海苔が登場。今もおなじみの、黒い和紙のような定型サイズになったことで流通しやすくなり、そこから海苔は世の中にどんどん広まっていった。

まるで歴史の授業みたいだが、山本海苔店・専務取締役(※肩書きは取材当時)の山本貴大さんのお話は、とてもわかりやすくて楽しいものだった。

ちなみに現在、東京湾で海苔の養殖はほとんど行われていない。
日本中の海苔の約4割が佐賀の有明海で生産されている。山本海苔店ほか有名メーカーの「特選品」は、多くが有明海産なんだそう。これも、初めて知ったことだ。

有明海は海水と淡水が混じり合う湾で、最大で6mという日本一の干満差がある。この干満差を生かし、くりかえし太陽の光と海水を浴びながら海苔が育っていく。 画像提供/山本海苔店

さて、味付け海苔のお話に戻ろう。 先日、たまたま居酒屋で隣り合わせた方に、海苔を分けてもらった。
その方の地元である徳島や関西ではおなじみの味だそうだが、パリパリした食感、東京のものに比べると濃いめのしょっぱい味付けで、おつまみにぴったり。こちらもとても美味しかった。地域によって海苔の味は違う。

味だけでなく、工夫を凝らしたパッケージもいろいろ。じつは日本中で様々な商品が登場している海苔。一見どれも同じように見えて、産地や採れた時期、加工するメーカーによっても味や食べ方は違うのだということがわかった。好みで食べ比べをしてみるのも楽しそうだ。

山本海苔店「東京プレミアムおつまみ海苔」。葛飾北斎と喜多川歌麿の名作浮世絵が描かれた缶のデザインが美しい。

 

山本海苔店
東京都中央区日本橋室町1丁目6番3号
TEL:0120-236222(フリーダイヤル)
http://www.yamamoto-noriten.co.jp

 


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