「だしを食べる」麺、にゅうめんが人気

みんなが大好き、和から洋まで、さまざまな麺がある。そのなかでも現在ひそかに注目されているヘルシー麺が「にゅうめん」。あっさりとした味わいに加えて、手軽に食べられる即席めんタイプのものが数々発売されて、幅広い世代に人気なのだという。

にゅうめんは、和風だしが味の鍵。体のことも考えて、本格的な味を手軽に楽しみたいもの。そんなときおすすめなのが、大阪淀屋橋にある昆布の老舗「神宗」から発売された即席にゅうめんだ。
「神宗」は、天明元年(1781年)に海産物問屋として創業以降、独自の加工法を代々受け継いできた。現在では、自社や業界向けのだし教室のほか、学校などでの食育も担い、だしの大切さを広めている。
そんな「だしのプロ」である神宗の九代目・小山鐘平さん考案の即席「にゅうめん」が発売された。

神宗九代目の小山鐘平さんが講師をつとめる「プロに学ぶだしセミナー」の様子

「麺のなかでも細いにゅうめんは最もよくだしを吸うので、だしとの一体感がおいしい。だからこそ、だし自体が美味しくないものでないとダメなんです」(小山さん)

ということで、さっそく九代目自ら上京の折に編集部まで出張いただき、実食させていただくことになった。

「だしのプロ」が作ったにゅうめんはココが違う

まず鍋に水500ccを入れて沸騰したら、にゅうめんとだしパックをいれるだけ。作り方は想像どおり、いたって簡単だ。
だが、ご持参のだしパックを見て驚いた。即席というから粉末を想像していたが、なんと、削ったかつおぶしと昆布がそのまま入っている。

「インスタントは、濃縮だしや粉末だしをお湯で薄めるケースが多いのですが、うちは昆布の老舗です。天然利尻昆布と宗田かつおの本枯れ節、天然真昆布とかつお本枯れ節など、料亭と同じような味が出せる本物の美味しさにこだわりました」(小山さん)

昆布と削ったかつお節はメッシュ袋に入っていて、だしの旨味はメッシュ袋の方がよく引き出せるからだという。ちなみに一般的には紙の袋が多いのは、かつお節が粉状だからだそう。

にゅうめんと、だしパックを入れた後、中火にして約2分煮込んだら、パックを引き上げて器などに入れてしっかりと絞る。そして絞っただしは鍋に戻す。ここがポイントで、このひと手間によりぐんと風味が増すのだという。

次に、調味液を入れて、強火でひと煮たちさせる。

器に盛りつけ、とろろ昆布とお好みで粉山椒をかけて完成!
だしパックはもちろん、調味液も醤油やみりんなどで作った自社製。麺は、のどごしや香りなど考えて、そうめんで有名な香川県小豆島のものを採用しているそう。

口に運ぶと、だしの豊かな香りと旨味が口中に充満し滋味の波が押し寄せる。考えてみたら、これは贅沢にも一番だし。だしを吸ったにゅうめんは上品な味わいで、とてもインスタント食品とは思えない。店で出されているのと同じような本格的な味だ。

昔は、だしを引いているご家庭が多かった。しかし現在は、顆粒や粉末のだし風調味料を使用している人が多くなりましたね。慣れてしまうと、本来のだしの味がわからなくなってしまう。だしと、だし風調味料は、別の物です」(小山さん)

そもそも、昆布から引いただしと、昆布だしを粉末にしてから使うのでは味が異なる。粉末からは本物と同じ昆布だしの旨味は出ないのだそう。

塩分濃度を抑えて旨味を出す技とは

私たちがおいしく感じる塩分濃度は一般に0.9%といわれている。だが、神宗のにゅうめんのだしは約0.8%。わざと薄味にしていて、それには理由があるそう。

実際に食べてもらってわかったと思いますが、塩分濃度が低くても美味しいと感じられるのは、だしの旨味が存分に出ているから。とろろ昆布を味のアクセントで加えましたが、実は血圧を下げる働きもあって、カリウムが豊富なんです」(小山さん)

薄味が、だしの旨味=おいしさにつながっている。天然の昆布と本枯れ節だからこその味わい、しかも仕上げのとろろ昆布が心憎い演出。

だしとはすなわち旨味。甘味、酸味、苦味、塩味と並ぶ、基本の五味のひとつです。このうち五つ目の旨味は、日本人が昆布だしから1908年に発見したもの。いまでは世界に広がり、外国語に訳せないことから“UMAMI”が世界の共通語になっているんですよ」(小山さん)

そもそも和食はだし文化で、煮物、味噌汁など、だしをベースに作る料理が多い。そして、だしの素になる鰹節や昆布はローカロリーの海産物。その旨味成分が引き出された本物のだしが体にいいのは当然のことだ。
最近では、美味しさだけでなく疲労回復、血液改善の効果に着目した「飲むだし」まで登場。だしは、日本でも世界でもブームになっている。

ティーバッグ型「神宗の飲むだし」。天然だしのおいしさを、飲み物として手軽に楽しむことができる

天下の台所、大阪が育んだ「だし文化」

ここで、だしの歴史を振り返ってみよう。江戸時代の大阪は「天下の台所」と呼ばれ、大変栄えた土地柄だったという。

当時の大阪はあらゆるものの集積地で、北海道から昆布、紀州や土佐から鰹が運ばれ、いわば昆布と鰹が交わる地だったんです。商人の街で、美食を求めるニーズや財力があったこともあり、食材を生かす独自のだし文化が発達しました」(小山さん)

料理用語の「割烹」(かっぽう)は大阪がはじまり。江戸の「江戸前料理」(江戸近郊の素材を使用した郷土料理)に対し、上方の料理は「割烹」と呼ばれる。包丁で切ることを指す「割」、火を使って煮炊きする「烹」を合わせた言葉で、和食の伝統的な調理法を指す。
おもてなしの高級料理=割烹、だから調理を行う際に着用する服を「割烹着」と呼ぶようになったのだそう。なるほど!と、またうなずいてしまった。

神宗の包装紙等には大きな松の絵が描かれている。これは慶応3年(1867年)眉山玉震によって描かれた「大坂中之島久留米藩蔵屋敷絵図」の一部で、神宗が家宝として永く秘蔵していたもの

昆布の老舗「神宗」、だしへのこだわり

昆布にもさまざまな種類があり、最高級とされる北海道の昆布でも土地や育ち方などで、味が異なり等級分けされている。
素材の味が重要なだしにおいて「神宗」では選りすぐりを使用して、飲むだしのほかにも塩昆布、とろろ昆布、つくだ煮など、さまざまなものを製造・販売している。

素材をただ仕入れるだけではなく、異物が混入していないか、金属探知機やX線異物検出機、目視で厳しくチェックして除きます。たとえば佃煮は、鰹節を削って、昆布と煮干しでだしをひくところから始め、直火釜でじっくり炊き上げます。職人が釜につきっきりでかき混ぜてつくります」(小山さん)

だからこそ、にゅうめんのだしには削りたてをたっぷりと使うことにこだわったのだ。

「すっきりだし」「濃厚だし」の2種類それぞれに使用している昆布と鰹節の種類が異なるのはさすが。しかも一袋756円(税込)のお手頃価格

神宗のにゅうめんは今後カレー味もつくられる予定で、一番だしに合うスパイスや調味液を現在開発中とのこと。発売が楽しみだ。

※本記事公開時点で開発中だった「神宗のにゅうめん【カレー味出汁】」は、その後2020年10月に発売(編集部・注)

神宗 公式サイト https://kansou.co.jp/

 


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